保湿が治療の基本です 1
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2014年8月07日 [木]
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アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能・生理機能低下によっておこる病気です
アトピー性皮膚炎は、体質的に皮膚のバリア機能・生理機能が低い人が、汗やホコリといった刺激を受けたとき、皮膚に炎症がおこる病気です。
どういうわけか、皮膚のバリア機能・生理機能が低い人は、「アトピー素因」も併せもっていることが多いため、アトピー性皮膚炎はアレルギーの病気だと思われがちです。しかし、必ずしもそうとはいえません。実は、それがこの病気の特徴なのです。
したがって、これからご紹介する塗り薬や飲み薬による治療は、アトピー素因をもった体質を根本的に治すことを目的にするのではなく、もともと弱い皮膚のバリア機能を補ったり、皮膚が壊(こわ)れて、かゆみが出てしまった患部の炎症を抑えたりする「対症療法」が中心になります。

具体的には、皮膚のバリア機能を補うには保湿外用薬を、かゆみや炎症を抑えるためにはステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を中心に、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の飲み薬を補助的に使います。どのような病気でもそうですが、「なぜ、この薬を使うのか」ということをきちんと理解したうえで治療に臨むことがたいせつです。
とくにアトピー性皮膚炎の場合、そうすることによって「副作用がこわくて、ステロイド外用薬を塗りたくない」「ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を塗ってもムダ」というような不安や誤解が生じにくくなり、治療を正しく進めることができます。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
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古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。