アトピーを悪化させないための保湿-アトピーと上手く付き合うための99.9%の過ごし方-

[アトピー・ノート] 横井謙太郎

2016年7月29日 [金]

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アトピー性皮膚炎の患者さんがアトピーと上手く付き合うためには、診療に加えて、日常生活の工夫も不可欠です。自身もアトピー性皮膚炎患者で、患者さんの集い「アトピーサロン」などを運営するNPO法人「アトピーを良くしたい」代表の横井謙太郎さんが、患者さんの生の声を3回にわたりご紹介。3回目は「保湿」についてお伝えします。

どんな保湿の工夫をしている? 自分に合った保湿剤とは?

保湿

保湿の話題は「アトピーサロン」でも多く、関心度が高いテーマです。皮膚科でヘパリン類似物質外用薬(ヒルドイド)や免疫調整薬タクロリムス(プロトピック)などを処方してもらう、あるいは市販のベビーローションなどを使う、もしくは保湿はしないなど、保湿剤についての考え方は百人百様でした。

保湿剤を買って、肌に合わず全く使えなかった経験があるアトピー有症者は多いと思います。それを回避するには、あらかじめ試供品などで試すことが必要ですが、その際は手の甲などあまり影響がない部位で試してみるという意見がありました。また、「香料の強い保湿剤は使いづらい」という意見も。男性からは、自然派の保湿剤を売っているお店には入りづらいという意見や、そのため皮膚科から出される保湿剤を使っているという意見もありました。

保湿剤を塗るタイミングはいつ?

保湿

保湿剤を塗るタイミングについては、「朝晩、保湿剤を塗る」という意見の他にも、「仕事中」に保湿すると調子が良いという意見がありました。
ほかに、「お風呂上がりにタオルで拭いた後すぐ」という声も。皮膚の水分が乾く前に保湿剤を塗ることで、その水分を逃がさないようにするこのやり方については、さらに、加湿器を置くことで、保湿力アップにつながるそうです。

一方で、お風呂から上がる前、つまりバスタオルで拭く前にワセリンなどを塗るという方もいました。これも水分を閉じ込める効果があると思います。肌の柔らかさが全然違うといった感想をお持ちです。
また、「高保湿タイプで肌に刺激となる成分が無添加の、化粧水や乳液が自分には合っている」という意見も。水や肌につけるものは、みなさんとても大切だと考えているということですね。

掻把行動、医師はどう考える?

保湿

かゆみなどで皮膚を掻いたりすると、アトピー性皮膚炎の発症や悪化の原因のひとつになります。掻いたり擦ったりする掻破(そうは)行動について、当法人の理事でもある皮ふ科しみずクリニック院長の清水良輔先生に聞きました。

清水先生によると、お風呂上がりにバスタオルで拭くと見せかけて、実はバスタオルを使ってゴシゴシと掻いている人が多いと言います。また爪で掻くよりも悪化させることが多いそうです。私もそうでしたが、心当たりがある方も多いのではないでしょうか?

掻破行動の特徴は「癖のように掻いている」ということです。掻き始めると我慢しようとしても難しく、それはアトピーの方みなさんが思うことだと思います。ところが、いつも癖のように掻いているシーンを思い起こし、掻く前の行動を変えることで掻く回数が減るという考え方があります。

掻く回数を減らすために保湿剤をうまく使う

保湿

では、どう掻く前の行動を変えていくのか?具体的には、バスタオルを使ってゴシゴシ掻いてしまう人が、お風呂の中で保湿剤を塗るようになるだけで、いつもの行動パターンが崩壊し、その結果掻かなくなる可能性が高くなるのです。

例えば、家に帰ってきて一目散に自分の部屋に向かい、服を脱いでいつもの椅子に座って、全身を気が済むまで掻くという人がいたとします。そこで、玄関に保湿剤を置いておき、これを全身に塗ってからでないと廊下には上がれないというルールを自分の中で決めておきます。そうすることでいつもの行動パターンは崩れ、掻く回数が減っていく可能性があります。これは、私自身がアトピーで体調が悪いときに試してみたことです。

このように、「掻破行動の変化に保湿剤をうまく使う」という考え方をもってみるのはいかがでしょうか。掻く回数が減ればアトピーは良くなるということは誰もがうなずけることだと思います。

自分に合う保湿剤に出会い、保湿剤を塗るタイミングを工夫することで、アトピーが改善する確率が高まると考えています。掃除・食事・保湿というテーマで連載してきましたが、いかがでしたでしょうか。どうぞ世界中のアトピーが良くなりますように、心から願っております。

 

横井謙太郎

NPO法人アトピーを良くしたい代表
生まれつきアトピー性皮膚炎があり、重度の症状に苦しんだ時期もあったが、現在は軽度まで改善。様々な治療を試し、今度は自分が支えになりたい「100人のアトピーの人がいたら、100通りの良くなり方がある」との想いからNPO法人を設立。アトピーサロンの定期的な開催、アトピーの人たちの夢を叶える「ドリームウィッシュプロジェクト」をはじめ、最近はメンタル面のサポートとしてカウンセリング事業にも注力。
NPO法人アトピーを良くしたい(http://atopyrecording.org/)

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