アトピー性皮膚炎の治療法

[アトピーの基礎知識]

2017年1月12日 [木]

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アトピー性皮膚炎の治療の種類

一般的に、下記のようなものが挙げられます。

  • スキンケア…保湿外用薬などを使用し、皮膚のバリア機能を低下させないようにします
  • 薬物療法…ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏・抗アレルギー剤などの治療薬を使用し皮膚の炎症を抑えます
  • 環境整備…ダニやホコリを取り除くほか、ペットを飼わないなど、環境を整えます

アトピー性皮膚炎は生活環境が原因となる場合が多いため、それらへの対策とともに、ステロイド外用薬やその他外用薬、抗アレルギー薬や免疫抑制薬などで治療を行います。加えて、スキンケアがとても重要です。

保湿剤を使ったスキンケアが基本です

アトピーが治らない場合の基本的な治療

皮膚のバリアの役割を担っている角質層は、セラミド、天然保湿因子(NMF)、皮脂腺によって、水分が保持されています。アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、角質層の角層構造が弱く、水分の蒸発のために皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しているといわれています。

アトピー肌の症状を改善させるには、スキンケアで保湿を心がけ、皮膚の乾燥対策を行い、皮膚の水分保持力を上げてバリア機能を良い状態に保つことが大切です。

具体的には皮膚を清潔に保ち、保湿剤を使用します。入浴時は、皮膚を乾燥させないタイプの石鹸を使用するのが良いでしょう。保湿剤によって症状が軽減し、ステロイド外用薬の効果が高まることや、ステロイド外用薬の使用量が減る効果が得られることが信頼性の高い臨床研究1)2)によって確認されています。

スキンケアについては「アトピー肌の保湿方法 -保湿外用薬(保湿剤)の選び方-」も合わせて御覧ください。

1) Hoare C, Li Wan Po A, Williams H. Systematic review of treatments for atopic eczema. Health Technol Assess. 2000;4:1-191.
2) Lucky AW, Leach AD, Laskarzewski P, et al. Use of an emollient as a steroid-sparing agent in the treatment of mild to moderate atopic dermatitis in children. Pediatr Dermatol. 1997;14:321-324.

アトピー性皮膚炎は何科?

アトピー性皮膚炎の診療してもらうには何科に行けばよいのか?この答えは実ははっきりとはしていません。皮膚科・アレルギー科・小児であれば小児科など、標榜している科目が様々です。初めて皮膚に異常が出た場合やひどく悪化した場合、アトピーではない疾患の可能性もあるので、まず皮膚科に受診しましょう。

QLifeアトピーの病院検索ではアトピー性皮膚炎を相談できる病院が都道府県別に探せます。どうぞご活用下さい。

薬物療法

ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などで皮膚の炎症を抑えることが一般的です。ステロイド外用薬を使用する際には、症状に合わせた強さのステロイド外用薬を、決められたやり方で塗らなければいけません。

ステロイド外用薬で十分な効果が得られない場合、免疫抑制薬が用いられることもあります。他にもかゆみなどの症状を軽くしてくれる抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、漢方薬が処方されるケースもあります。

もし効果が見られない場合は、医師に相談しましょう。また、良くなったからと勝手に判断して、薬の使用を止めてしまうのはNGです。アトピー性皮膚炎は増悪と寛解を繰り返します。リバウンドや副作用、状態の悪化は、そのほとんどが医師や薬剤師の指示を守らなかった場合に引き起こされていることが多いようです。医師や薬剤師の指示通りに使用するとともに、決められた日にきちんと受診するようにしましょう。

環境整備

ハウスダストやダニなど、アレルギーの元になるものを除去します。毛のあるペットも避けた方が良いでしょう。
エアコンのフィルターは、ダニやウイルスの巣になりやすいので掃除を忘れずに。寝具は床へ直に敷く布団より、ベッドの方がダニを寄せ付けにくいので良いでしょう。

乳児・幼児のアトピー性皮膚炎治療

乳児のアトピーは、主に顔や耳、頭、目などに赤班やじゅくじゅくとした湿疹が出ます。
多くの赤ちゃんに頻繁に起こる湿疹は、過剰な皮脂分泌や毛穴の詰まりによるもの、肌の急激な乾燥によるもの、また、どのような原因で炎症が起きているのかと問わず、すべてを乳児湿疹と呼びます。
乳児湿疹とアトピーの違いは見分けることが難しく、日本皮膚科学会のガイドラインによると、6カ月以上(乳幼児では2カ月以上)、湿疹の症状が続く場合は、アトピーと診断されるようです。

アトピー性皮膚炎の原因は、特定の食物に対するアレルギーや母親の妊娠中の飲酒、喫煙、特定の薬の摂取が関係するとも考えられています。しかし、科学的に根拠のある詳細な原因は判明していません。

アトピー肌の乳児・幼児のイメージ画像

治療の基本はスキンケアですので、保湿剤を欠かさずに塗りましょう。入浴をさせてキレイに体を洗ってからが良いでしょう。赤ちゃんによっては、保湿剤にも合わないものがあります。また、お風呂で温まるとかゆみが強くなるので、お湯はぬるめに。汗がついたままだとかゆみが出て、掻き癖が治らなくなってしまうので、汗は早めに押さえるように拭き取りましょう。

口の周りがごはんで汚れると刺激になりやすいので、ごはん前にも保湿剤を塗ると良いかもしれません。

下着は肌に刺激のない木綿のものを着せ、洗濯機はすすぎの回数を多くします。洗剤が残っていると、それが刺激になってかゆみが出ることもあります。漂白剤は避けた方が良いでしょう。アトピー用の低刺激洗剤も市販されています。

ジュクジュクして赤みや炎症が強い時は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを医師の指示通りに使用します。

抗ヒスタミン薬(かゆみを軽くする)、抗アレルギー薬(アレルギー反応を抑える)等が処方された場合は、きちんと服用させてください。薬について、飲み合わせなど気になることがあれば、医師や薬剤師にしっかり聞いておきましょう。

離乳食は、アレルギー反応が明らかに出た、あるいは検査でアレルギーだと分かった食品を除去食として除く方が良いでしょう。ただし、アレルギーを起こしやすいからといって卵や乳製品などを過剰に制限すると栄養失調になりますので、神経質になり過ぎないでください。

ダニ・ホコリ対策はとても大切です。毛のあるペットは避けましょう。ベビーベッドの時期が過ぎても、子供用ベッドを使うとダニを寄せ付けにくいので安心です。

小児のアトピー性皮膚炎治療

乳幼児は皮膚が薄く皮脂も少ないため、とくに皮膚が敏感で、アトピー性皮膚炎は決してめずらしいものではありません。成長して皮脂が増えるとともに、次第に症状が軽くなっていくケースも多いようです。

小児のアトピー肌のアレルゲンについて

小児のアトピー治療も、基本は保湿外用薬によるスキンケアです。
皮膚をしっかりと保湿した上で、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを使用します。症状によっては抗ヒスタミン薬(かゆみを軽くする)、抗アレルギー薬(アレルギー反応を抑える)等が処方される場合もあります。きちんと守られた用法で服用しましょう。

小児の中でも、10歳以降の数年はスキンケアの管理・継続が難しい年頃です。自立心が芽生える一方で、本人に全てを任せてしまうと不満や不安も感じるようです。完全な自己管理は無理ですが、できるだけ本人が使いやすい保湿薬を選ぶなど工夫し、根気よく励ましながらスキンケアが楽しく続けられる対策をしましょう。

この年頃は転校や受験、学校の友人関係などが主なストレスになります。症状が安定してきても、このようなストレスや環境の変化等で再発するケースが珍しくありません。
症状が再発し、かゆみや炎症などが強くあらわれた場合は、医療機関で適切な診察を受ける必要があります。

大人のアトピー性皮膚炎治療

大人のアトピー治療も、基本は変わらず保湿によるスキンケアです。

ただし、大人の皮膚は厚くなり、治療薬の効き目成分が浸透しにくくなっているため、処方されるステロイド外用薬の強さが変わることがあります。部位(首や顔など皮膚の柔らかい部分)ごとの薬の強さの使い分けも必要になってきます。

かゆみや炎症が強い場合は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの他に抗ヒスタミン薬(かゆみを軽くする)、抗アレルギー薬が処方されることもあります。ただし、妊娠中や授乳中の女性は服用できません。他にも使用できない外用薬があるので、治療中に妊娠・出産を希望する場合は、必ず医師に相談しましょう。

重症度が高くなかなか改善しない場合は、免疫抑制薬や紫外線療法、ステロイド内服薬が使用される場合もあります。試してみたい場合は、医師とよく相談してください。

大人のアトピーは、思春期・大人の患者さんが中心です。ただしこの年代はストレスが多岐にわたり、些細なことがきっかけで再発することもあります。化粧品は低刺激のものを選択し、ステロイド外用薬を常備し、必要になった際にはすぐ使用できるようにしておくと安心です。
また再発した場合は、早めに医療機関で診察を受けてください。

アトピーの重症度の見極め方

アトピー性皮膚炎の重症度は、「皮疹の状態」「炎症の程度」「患部の広さ」によって決まります。分類は、もっとも重症の状態が最重症で、重症、中等症、軽症の順に軽くなっていきます。

アトピー性皮膚炎は、体全体に症状が現れることが少なくないため、体にできた皮疹を見て「重症かもしれない」と不安に思ってしまう人もいるかもしれません。しかし実際のところは、「強い炎症がおこっている部分が、体のどれくらいの範囲に広がっているか」という程度と広さのバランスが大事なポイントです。
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版」では、最重症、重症、中等症、軽症の判定は、次のように定めています。

  • 軽 症:面積に関わらず,軽度の皮疹(*)のみみられる
  • 中等症:強い炎症(**)を伴う皮疹が体表面積の 10% 未満にみられる
  • 重 症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の 10% 以上,30% 未満にみられる
  • 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の 30% 以上にみられる

*軽度の皮疹:軽度の紅斑,乾燥,落屑主体の病変
**強い炎症を伴う皮疹:紅斑,丘疹,びらん,浸潤,苔癬化などを伴う病変

重症度にある「強い炎症を伴う皮疹」とは、皮膚が赤く盛り上がる(紅斑、丘疹(きゅうしん))、ジクジクした湿疹(浸潤)、象の皮膚のように厚く、硬くなった状態(苔癬化)を指します。
これらの皮疹ではかゆみが非常に強いため、勉強や仕事が手につかない、眠れないといった状態になり、生活の質が下がってしまいます。

自分の症状を把握すること、そして、以前にアトピー性皮膚炎の治療を受けたことがある場合は、これまでどのような治療をしてきたか、使用していたステロイド外用薬やタクロリムス軟膏の量や薬剤名、飲み薬の量や薬剤名、使っていた期間を使用したことがあるかないかなどを、受診する病院の医師にきちんと話すことが重要です。

<参考文献>
古江増隆(九州大学大学院皮膚科学教授) 「正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎」
日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版」

アトピー基礎知識

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