治療に使用する2種類の外用薬 2
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2014年9月04日 [木]
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タクロリムス外用薬はおもに顔や首などに使います
タクロリムス外用薬は、炎症を抑える効果が期待されている薬です。アトピー性皮膚炎では、おもに顔や首など、吸収率がよくステロイド外用薬が長く使用できない部位に塗ります。ステロイドホルモンではないため、ステロイド外用薬による副作用の心配がなく、長期でも安全に使うことができます。
タクロリムス外用薬の適量
タクロリムス外用薬の使用量は、体重10Kg当たり1回1g以内を1日2回までです。たとえば、体重50Kg(13歳以上で)の人であれば、1回5gを超えない量を1日2回まで塗ることができます。患部に塗る適量の目安は、ステロイド外用薬の軟膏と同じです。大人の人さし指の先から第一関節まで押し出した量が約0.5g。この量で大人の手2枚分の患部に塗れます。

タクロリムス外用薬の特徴
タクロリムス外用薬は、炎症に対して著しい効き目があります。ただし、塗った患部がほてったり、ヒリヒリしたりする刺激症状が出ることが欠点です。そのため、初期に、かゆみがひどくてあちこちかいて、患部から血が出ていたり、ジクジクと水のような浸出液が浸み出していたりするときには使えません。ステロイド外用薬を使って、症状が改善してきたところで使い始めます。
しかし、6~7割の人は、皮膚に灼熱(しゃくねつ)感があったり、ヒリヒリしたりします。たいていは数日でおさまってきますが、なかにはいつまでも刺激感が残ることもあります。使用する前に保湿外用薬を塗ると、ヒリヒリ感は少しやわらぎますが、塗ることを苦痛に感じるときは、いったんタクロリムス外用薬の使用をやめて、ステロイド外用薬に戻すこともできます。
タクロリムス外用薬はステロイドホルモンではないため、ステロイド外用薬による皮膚萎縮(いしゅく)や血管拡張、多毛などの副作用はありません。顔や首などにアトピー性皮膚炎の症状が出ている人は、何度でもチャレンジして薬に慣れてもらい、ステロイド外用薬なしで過ごせるようになるのが理想です。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。