タクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏) 1

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2015年3月05日 [木]

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タクロリムス外用薬は、新しい選択肢として注目されています

最近、大人のアトピー性皮膚炎が増えています。症状のなかで増加しているのは、顔が赤く腫(は)れてしまうケースです。このようないわゆる赤ら顔の治療には、ミディアム(マイルド)クラス以下のステロイド外用薬を用いますが、塗ってもなかなか効きにくく改善がむずかしいことから「難治性の赤ら顔」といわれています。

難治性の赤ら顔にミディアムクラスより強いストロングクラス以上のステロイド外用薬を使うと、ある程度は症状が改善することがわかっています。しかし、顔は皮膚が薄く、薬の吸収率の高い部位です。作用の強いステロイド外用薬を長期的に用いることは、副作用の面からあまりお勧めできません。そこで、難治性の赤ら顔に対する有効な治療法として期待されているのがタクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏)です。

タクロリムス外用薬は、日本の製薬会社が開発した免疫抑制薬です。この薬のもとになっているFK506は、筑波山麓(つくばさんろく)の土壌中から発見された放線菌の一種(ストレプトマイセス・ツクバエンシス)からみつけ出されました。これは、そもそも肝臓や腎臓、骨髄を移植したときに拒絶反応を抑えるために用いられてきた薬ですが、アトピー性皮膚炎の治療薬としても使えるように軟膏の開発が進められ、大人用は1999年、小児用では2003年に健康保険の適用になりました。現在では、世界各国で承認され、とてもよく使用されています。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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