タクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏) 2

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2015年3月19日 [木]

おすすめアトピー記事

吸収率が低く、顔や首などに使われます

タクロリムス外用薬は、アレルギー性の炎症にかかわるT細胞という免疫細胞の働きを強力に抑える働きがあります。その効果はステロイド外用薬より高いことがわかっています。ただし、皮膚からの吸収率はよくないことから、多くは顔や首など吸収率のよい部位に用いられます※5。手や足、胴体に使われることもありますが、効き始めるまでに時間がかかります。速効性のあるステロイド外用薬の効果に慣れている人にとっては、少しもどかしいかもしれません。ただし、使い続けることで効果が実感できます。

(※5)FK506軟膏研究会: FK506 軟膏第III 相比較試験―アトピー性皮膚炎(顔面・頸部)に対するプロピオン酸アルクロメタゾン軟膏との群間比較試験―.皮膚科紀要92:277-288,1997
【概要】
16歳以上の顔面や頸部に中等症以上のアトピー性皮膚炎をもつ患者さん151人に対し、タクロリムス外用薬を1日2回塗る群とステロイド外用薬のプロピオン酸アルクロメタゾンを1日2回塗る群に分けてランダム化比較試験を行いました。1週間後の効果をみたところ、著明改善率はタクロリムス外用薬の群が86.3%であったのに対し、プロピオン酸アルクロメタゾンの群は35.7%で、タクロリムス外用薬の群の改善率が有意に高くなっていました。なお、安全性に関しては両群に有意差はみられませんでした。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

興味のあるタグをクリック