ステロイド外用薬 5

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2015年2月19日 [木]

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ステロイド外用薬ではリバウンド・離脱症状はおこりません

副作用と同じように気になるのが、薬を中止したときにおこるリバウンドや離脱症状です。患者さんのなかには、リバウンドや離脱症状をおそれて、勝手に治療をやめてしまい、それによってアトピー性皮膚炎の症状を悪化させてしまっているケースが少なくありません。

しかし、ここでしっかり理解していただきたいことは、リバウンドや離脱症状はステロイド内服薬での話だということです。

ステロイドは本来、体のなかの副腎皮質でつくられるホルモンです。しかし、長期にわたって飲み薬のステロイド薬を用いていると、副腎皮質の機能が抑えられて、体内でつくられなくなります。そのため、ステロイド薬を急にやめると体にとって必要なステロイドホルモンが一時的に不足します。そうすると抑えられていた症状がぶり返し、急に悪化したり、めまいや吐き気、発熱、疲労といった離脱症状が現れたりするのです。ただし、血中濃度が上昇しないステロイド外用薬ではこのようなリバウンドや離脱症状はおこりません。

しかし、悪化しつつあるアトピー性皮膚炎は、完全に軽快していないうちに治療をやめてしまうとすぐにぶり返します。ですから塗るのを急に中止しないで、アトピー性皮膚炎を十分に軽快させてから徐々に塗る回数を減らしてください。

不安やこわさから自分の判断で塗る量を控えめにしたり、回数を減らしたりすると、炎症がおさまりにくく、いつまでも皮膚の状態がよくなりません。かえって、ステロイド外用薬の使用が長期間におよんでしまいます。量や回数を守らなければならないのは、飲み薬ばかりでなく塗り薬も同じです。医師は、炎症の状態をみて、症状に合ったステロイド外用薬の強さ、塗る量、回数を判断しています。それを信頼して、治療を続けるようにしましょう。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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