タクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏) 3
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2015年4月02日 [木]
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タクロリムス外用薬の注意点について
タクロリムス外用薬には免疫抑制作用があるため、ニキビが出たり、皮膚の感染症になったりすることがありますが、本当にごくまれです。使用する量が少ないこともあって、副作用などもほとんどありません。
ただし、タクロリムス外用薬を使っているときは、なるべく日光に当たらないように注意しましょう。日常生活で買い物に行ったり、洗濯物を干したり、通勤通学をする程度であれば気にすることはありませんが、過度の紫外線を浴びることは、望ましくありません。運動会や海水浴のように日光に長時間当たる日は、薬は塗らないようにしましょう。

また、アトピー性皮膚炎の治療の一つに紫外線療法がありますが、タクロリムス外用薬を塗っているときは、この治療はできません。さらに2歳未満の乳幼児、妊娠中や授乳中の女性も使用することはできません。
なお、マウスにタクロリムス外用薬を塗った実験では、高濃度の使用が長期間続くとリンパ腫(しゅ)が増加することがわかっています。しかし、薬との関連性ははっきりしていません。また、アトピー性皮膚炎の人が使用してもリンパ腫や皮膚がんの発生率が高くなるという報告もありません。適量の使用であれば薬の成分が血液中に継続して入る心配はなく、問題はありません。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。