2歳から12歳未満の治療計画
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2014年10月16日 [木]
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ステップ1 診察・検査
当日
- ほかの病気ではないことをしっかりとチェックします。
- 診断基準と重症度分類に基づいて、問診や触診で診察します。患者さんが自分で説明できないときは、つき添いの両親などから話を聞きます。診断はその日のうちにつきます。
- 血液検査でIgEや好酸球を調べることがあります。
ステップ2 スキンケアと薬物療法
1、2週間~2カ月
- スキンケアのため、全身に保湿外用薬を塗って皮膚の乾燥を防ぎます。
軽症
1、2週間、スキンケアのみで様子をみます。
中等症
ストロングクラス以下のステロイド外用薬を塗ります。
最重症・重症
ベリーストロングクラス以下のステロイド外用薬を塗ります。
中等症 最重症・重症
顔や首など薬の吸収率が高い部位は、ミディアム(マイルド)クラス以下を使います。また、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を補助的に用います。
ステップ3 治療効果の確認(1)
よくなってきた場合 およそ3週間おき
- 症状が安定して悪化がみられない場合は、スキンケアを続けます。
軽症
スキンケアを継続します。
中等症
ステロイド外用薬を塗る回数を減らしたり、ミディアム(マイルド)クラスに変更したりします。これでよい状態が続けば、ウィーククラスに変更することもあります。
最重症・重症
ステロイド外用薬をストロングクラス以下に変更します。または、塗る回数を減らします。
中等症 最重症・重症
顔や首などは、ステロイド外用薬をやめてタクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏)(※)に変更します。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は飲む回数を減らし、症状があるときだけ服用します。
※タクロリムス外用薬
免疫細胞の働きを抑えて炎症を鎮める非ステロイド系の塗り薬。日本皮膚科学会では、2008年に改訂されたガイドラインで、炎症に対する外用薬としてたいせつな選択肢の一つとして位置づけています。
ステロイドホルモンではないので、ホルモン作用による副作用はありません。吸収率の高い顔や首では著しい効き目があります。胴体や手足でも有効な人はたくさんいます。2歳以上から使うことができます。
ステップ4 治療効果の確認(2)
よくならない場合 およそ3週間おき
- 症状に変化がない、または悪化した場合もスキンケアは続けます。
- 食物アレルギーの合併が疑われるときは、皮膚試験を行うことがあります。食物アレルギーを合併している場合は、アレルゲンになる食べ物を制限します。
軽症
小児では、かゆみが現れたら一時的にミディアム(マイルド)クラス以下のステロイド外用薬を塗ります。治療効果をみてストロングクラスのステロイド外用薬を塗ることもあります。かゆみが強いときは、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を補助的に用います。
中等症
症状が変わらないときは、ストロングクラスの別の種類のステロイド外用薬にします。悪化した場合は、その部位だけにベリーストロングクラスのステロイド外用薬を一時的に塗ります。
最重症・重症
症状に変化がない場合、ベリーストロングクラスの別の種類のステロイド外用薬に変更します。悪化した場合は、その部位だけ一時的に、ストロンゲストクラスのステロイド外用薬を塗ります。
中等症 最重症・重症
症状がよくなったら、胴体や手足にもタクロリムス外用薬を試してもらいます。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の服用は続けます。
最重症・重症
症状が改善しない場合は、紫外線療法(※)を行ったり、飲み薬のステロイド薬(※)を服用したりすることもあります。
※紫外線療法
免疫の働きを抑える紫外線の作用を医療に応用した治療法。通常の治療を続けてもなかなか回復しない場合、行われることがあります。
※ステロイド薬
かゆみや炎症が強く、回復しない場合、一時的に服用するステロイド薬。アトピー性皮膚炎では、プレドニゾロン(商品名プレドニン、プレドニゾロン)やベタメタゾン(商品名リンデロン)などが使われます。
ステップ5 治療の終了または継続
寛解、症状の安定
- かゆみや皮疹がほとんどなくなり、保湿外用薬やタクロリムス外用薬だけで過ごせるようになれば寛解です。
軽症
ステロイド外用薬の使用はやめます。寛解後もスキンケアを続けて皮膚の乾燥を防ぎます。
軽症 中等症
寛解後、症状が現れた場合は、必要に応じてミディアム(マイルド)クラス、またはウィーククラスのステロイド外用薬を塗ります。
最重症・重症
寛解後、再び症状が現れたらストロングクラス以下のステロイド外用薬を塗って再発を防ぎます。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。