病気のしくみを正しく理解しておきましょう 4

[病気に対する正しい知識] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年6月02日 [木]

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皮膚の外側と内側の両方が関係します

アトピー性皮膚炎は、皮膚の外側から来る刺激に対して皮膚の内側が過剰反応を示し、皮疹(ひしん)やかゆみなどの症状が現れるものです。ここには、外側からの刺激を容易に受けやすい体質(皮膚のバリア機能の低下)と、ちょっとした刺激でアレルギー反応をおこしやすい体質(アトピー素因)とがかかわっています。つまり、アトピー性皮膚炎には、皮膚の外側と内側の両方が関係していることになります。

まずは、外側の要因である皮膚のバリア機能の低下について説明しましょう。先にお話ししたように角質細胞の間をセラミドがきちんと埋めていれば、体内の水分を逃したり、外の異物が侵入したりすることはありません。

ところが、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、セラミドがふつうの人より少ないことがわかっています。角層の構造がもろく、水分を逃しやすいため、乾燥肌になってしまうと考えられます。ちなみに、このような皮膚の乾燥状態を専門的には、「アトピー性ドライスキン」と呼んでいます。

また、アトピー性皮膚炎の患者さんと健康な人の皮膚で、一定期間内に蒸発する水分の量を比べたところ、アトピー性皮膚炎の患者さんのほうがたくさんの水分が失われることもわかりました。

角層が薄く、もろいということは、外部の刺激や異物も容易に入り込みやすいということになります。また、角層のある表皮には、かゆみを感じる神経がいくつも延びています。そのため、角層が薄くなるほど、外部と神経細胞の先との距離は短くなります。つまり、皮膚のちょっとした刺激がすぐに神経細胞に伝わり、かゆみにつながりやすいのです。さらに、かゆいからといってかいてしまうと、皮膚に傷ができて角層がさらに弱くなります。皮膚がいっそう過敏になって、かゆみが増すという悪循環に陥ってしまいます。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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