病気のしくみを正しく理解しておきましょう 3
[病気に対する正しい知識] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2016年5月19日 [木]
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皮膚の働きとしくみを知りましょう
どうしてアトピー性皮膚炎がおこるのでしょうか。皮膚の働きやしくみについてお話ししましょう。
皮膚は、外部からの刺激や異物などから体を守る働きをしている重要な臓器です。また、体内の水分は生命の活動にとてもたいせつなもので、これを逃さないように保持して、蒸発させないようにしています。さらに、「皮膚は内臓の鏡」といわれます。私たちが見ることのできない体内のさまざまな臓器の異常や病気を映し出してくれることもあります。
皮膚の構造は、表皮、真皮、皮下脂肪組織の3層に分かれています。表皮の外側にある組織が角層(角質層)です。ここには、角質細胞が10~20層ほど、ちょうど建築材料のレンガのように重なっていて、時間がたつ(約2週間)と上の層から順にあかとなってはがれ落ちます。こうして皮膚の新陳代謝が繰り返されています。
角質細胞の間は、セラミドという角質細胞間脂質で埋めつくされています。角質細胞がレンガだとすると、セラミドはレンガどうしをくっつけるセメントのようなものです。建物の場合、レンガが規則正しく並んで、その間をセメントでしっかりくっつけていれば、そう簡単に崩れることはありません。しかし、レンガの置き方がバラバラで、しかもセメントも十分に使っていなかったらどうなるでしょうか。その建物はもろく、すき間からさまざまなものが出入りします。実は、アトピー性皮膚炎の皮膚では、これと同じようなことがおこっています。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。