どんな症状が現れるのでしょうか 5

[病気に対する正しい知識] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年11月04日 [金]

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合併しやすい皮膚の感染症に気をつけましょう

アトピー性皮膚炎になると、皮膚の一部のバリア機能が壊れてしまうため、皮膚の感染症にかかりやすくなります。原因となるのは、黄色(おうしょく)ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルスなどで、これらによる「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」「カポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)」「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」が合併しやすい感染症です。いつもと違った皮疹の状態には注意し、異常に気づいたらすぐに受診しましょう。

伝染性膿痂疹

多くは、黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌によって発症し、「とびひ」とも呼ばれる感染症です。どちらも日常どこにでも見られる菌で、健康な人がけがをしたときに感染することがあります。菌の量が少なければ問題はありませんが、菌数が増加すると皮疹を悪化させて、アトピー性皮膚炎の治療効果が上がらなくなります。
医師から感染を指摘されたら、シャワーやお風呂で皮疹のある部分を刺激の少ない石鹸で洗って、皮膚を清潔に保つことがたいせつです。

カポジ水痘様発疹症

単純ヘルペスウイルスによる感染症です。健康な人では、唇など体の一部に発疹ができて軽症ですみますが、アトピー性皮膚炎になっているとウイルスが全身に広がり、発熱やリンパ腺(せん)が腫れるカポジ水痘様発疹症になり、重症化するおそれがあります。このウイルスによる症状は、痛みのある水疱(すいほう)(水ぶくれ)が特徴です。感染がわかったら基本的には入院して、抗ウイルス薬の治療(点滴や飲み薬)をします。そのときはいったんアトピー性皮膚炎の治療を休み、感染症が治ってから治療を再開します。

伝染性軟属腫

伝染性軟属腫は「みずいぼ」とも呼ばれ、ポックスウイルスによる感染症です。感染した部分に触ることで移る接触感染が特徴です。体にブツブツの小さないぼがたくさんできるので、触らないようにします。発症したときは、医師が穿刺(せんし)器具(ピンセットのようなもの)で一つひとつ取るなどの治療をしていきます。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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