これからステロイドを止めたいと思っている方へ

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年12月02日 [月]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

個人的な考えですが少し調子が悪いときにきちっと使って良くなると数週間は調子が良いまま過ごせるという方は、ステロイドを止めようなどと考える必要はないと思います。

今の使い方(リアクティブ療法:調子が悪いときにのみ使って良くなったら使わないというやり方)を基本にして、どうすればアトピーが良くなるかを積み上げてゆくことで、やがて良くなって結果的にステロイドが必要なくなることを目指すべきだと思います。
しかしステロイド使用が長期に渡りきちっと使っても止めれば数日で悪くなってしまい、またすぐに使わないといけないというような状況になって不安を感じている方は、もう一度ステロイドの使い方を再検討する必要があると思います。

永年ステロイドを使い続けているのに調子が悪く、外用しても使い始めた頃のようなシャープな効果が感じられなくなり不安になって急にステロイドを止めるという強行着陸型の脱ステロイドをした方は、いわゆるリバウンド現象(便利な言葉ですが医学的に正しい用語とは言えません)といって急にアトピー症状が増悪し非常に大変な思いをされた方が多いと思います。
長期の入院が必要になったり、なかには学校へ行けなくなったり、職を失ったり、うつ状態になったり、目の合併症(白内障、網膜剥離など)が進行して手術を余儀なくされたり、などなど重篤になったアトピーの影響は非常に大きいと考えます。

ステロイドを止めると言っても何とかこのようなことを経験せずに止められるという方向を医療は提案しないといけないと考えています。
大きな枠組みとしては、やはり薬以外のことでいかにアトピーが良くなれるかが重要です。
そして、そのためにはステロイドを止めて急性増悪をきたしたという理由はステロイドという物質の問題が主体ではないということを知ることが重要だと思います。
いつもステロイドを使って症状を抑え続けたことでご自身が良くなるために何が重要であるかということが見えなくなり、ステロイドを使っているという不安の中に身を置いてしまったという認識が重要です。

掻くことが減ることはアトピーが良くなる共通の出来事だと思いますが、自分流の良くなる考え方や行動、習慣に出会えるかどうかが鍵で、我々医療者はそのお手伝いをするのだと考えます。
そして実際に薬をどうするかに関してはプロアクティブ療法がお勧めです。
まずは一旦思い切りきれいになってその後ステロイドを3日に1日外用し血液検査をモニターしながらその値を参考に4日に一日、5日に一日と外用する間隔をあけてゆく方法です。
うまくいくと掻破習慣から解放されアトピーが悪くならないままステロイドを止めれる可能性が出てきます。
アトピーはステロイドを止めるから良くなるのではなくて、止めるという決断と結果薬と違う部分で良くなりたいというモチベーションを介して良くなる物語がスタートするのだと思います。
そして、そのことは永年怖くてステロイドを使えなかった人が使ってきれいになるというモチベーションから良くなる物語がスタートするのも同じことだと考えます。
次のコラム「アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法」では、プロアクティブ療法についてもう少し詳しく述べます。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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