小児のアトピー性皮膚炎

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年11月16日 [土]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

昔は小児期に治ってしまったアトピー性皮膚炎が今は治りにくい病気になってしまっています。
原因的な証拠のない病気なので今は治りにくくなった理由も確実なことは言えません。
しかしながら30年以上アトピーを診てきた経験から敢えてこの理由を考えてみたいと思います。

もちろん仮説です。一言で言うと原因が解らない病気の原因探しを続けてきたことが、病気を治りにくくさせていると思っています。

最初は医学主導だったと思います。
しかしわれわれが生きている現代はまさに原因論の時代です。
民間的な考え方も原因論に立脚したものとして医学の一部と同調しながら、また一部は反発しながら特有のアトピーにまつわる不安をはぐくんできたと言えると思います。

例えば原因論とは、医学的にはダニが悪い、食べ物、ペット、金属が悪いなどです。民間的には水が悪い、塩素が悪い、ステロイドが悪い、石鹸が悪いなどでそのことを理由に様々な商売も展開されています。
現代の情報システムの中で、患児と患児を思う家族や取り巻きの人々の間で不安が増幅されるシステムが出来上がってしまうことが昔と全然違うと思います。

ともかく昔は「胎毒だからそのうちなおる」と構えておれた病気が現在はあれもダメこれもダメと患児の不安をあおる結果となり本来の心理社会的な発達に大きな影響を与えていると考えられます。
そしてそのことがアトピー性皮膚炎を持続させたり掻破行動の背景になったりして、昔は治れたはずのアトピーが現在は治りにくくなっているというのが私の自説です。

私が担当しているアトピーのコラムは、これまで成人のアトピー性皮膚炎の方に向けて連載してきました。
これからも続けてゆく予定ですが、小児のアトピーについても本来治れるはずの病気がどうすれば治れるかという視点から患児を支えるご家族向けのコラムを連載してゆく予定です。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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