妊娠とアトピー性皮膚炎

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年11月14日 [木]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

妊娠がアトピー性皮膚炎に与える影響に一定の法則はありません。
もちろん全く影響を受けない人もいますが、妊娠中に良くなる人、悪くなる人もいます。
症状が動く時期も妊娠初期から、中期、後期、さらには分娩後と様々です。

極端な例では、妊娠中に症状が消えてしまった人、分娩が済んだらただちに良くなった人、つわりが終わったら劇的に改善した人、初めての妊娠ではひどかったのに2人目は平気だった人、などなど本当に様々な症例を経験させていただいてます。

このことから言えるのは、アトピーの症状は、妊娠によるホルモンの動きなどとは関係がないということです。おそらく個人個人の妊娠に対する受け止め方、構え方、妊娠がもたらすその時の生活状況の変化などによって変わってくるのではと考えています。

アトピーの方の妊娠に関する共通の不安は、産まれててくる子がアトピーにならないかということだと思います。
アトピー性皮膚炎に関しては、全国レベルでの詳細な統計はありません。
しかし、アトピー性皮膚炎の母親からアトピー性皮膚炎の子供が生まれる可能性と、アトピー性皮膚炎のない母親からアトピー性皮膚炎の子供が生まれる確率は同じだと言われています。

それでは、ここで質問です。あなたのお母さんはアトピー性皮膚炎ですか?

妊娠を考えている、あるいは妊娠しているアトピーの方で、お母さんがアトピーでない方へのメッセージ:「お母さんは妊娠のとき、アトピーの子供が産まれてくるという心配はしていなかったはずですよ。」
同様に妊娠を考えている、あるいは妊娠しているアトピーの方で、お母さんがアトピーの方へのメッセージ「心配するのはともかく元気に産んでからにしようね」

そんなに簡単に不安がなくなるとは思いません。
確かに、妊娠中に食物アレルゲンを想定し除去したりすることは、胎盤を経由して獲得する食物アレルギーの発生は抑えるかもしれません。
しかし、アトピー性皮膚炎の発生を予防するという事に関しては、医学的証拠はありませんので気をつけてください。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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