発汗とアトピー性皮膚炎
[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生
2013年11月12日 [火]
おすすめアトピー記事

皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。
学生時代に部活で一生懸命運動をしていた頃はアトピーの調子が良かったのに、夏になると調子が悪く、「汗が悪い」と感じている患者さんに多く出会います。
発汗とアトピー性皮膚炎を考える上で、非常に示唆に富んだ経験をさせてもらった患者さんに出会ったので、ここで紹介させていただきます。
本来アトピーの人は、ドライスキンでうまく発汗できないことが多いように感じています。
30代のその女性は、当時アトピーがひどく、自分では全く汗をかかないと訴えており、夏は苦手、運動は嫌いで、仕事以外は家にこもりがちとのことでした。
ある日、その現状を打開しようと本来電車通勤している道のりを自転車で通勤してみたのです。その日は猛暑日でしたが、朝の出勤時は比較的涼しかったそうです。夕刻の帰宅時は、34℃の中、約25分間自転車を漕いで帰宅したそうです。熱がこもって苦しくて、1時間ほど水風呂に浸かってやっと治まったとのことでした。
この患者さんが凄かったのは、その経験から逃げ出さず、モチベーションにして毎日自転車通勤を始めたことです。しばらく続けるうちに半身だけ汗をかけるようになり、やがて全身発汗に至り、数カ月の内に湿疹はほとんど消失していました。
この患者さんと出会って改めて感じたのは、「過去の体験を良き未来に変えようというモチベーション」と「そのモチベーションを向ける方向(この患者さんの場合は毎日の自転車通勤)」が非常に重要だということでした。
私は「夏に悪くなるという患者さん」は、下記のように想像しています。
- 夏に悪くなるという患者さんは、湿疹があるところに発汗して掻くことで悪くなる。
- その体験を大脳が認識して夏の到来とともに不安になる。
- そのことが条件付けされた免疫反応として皮膚病変を増悪させる。
- さらに掻いて悪循環になる。
繰り返されているマイナスの反応に、その患者さんなりの何かの変化が必要で、そのことのお手伝いをすることがが医療の役割であると感じています。
清水良輔先生
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策
略歴
1978年帝京大学医学部卒業1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る