阪神大震災とアトピー性皮膚炎そして東日本大震災 5

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年12月04日 [水]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

私は阪神大震災の被災経験があるせいか東日本大震災が起こったあとは、つい阪神大震災のことを思い出しながら診療している自分がいました。

毎晩テレビで今まで見たこともない津波の映像に見入ってしまい、気がついたら夜中の3時・4時で寝不足の生活が続きました。

津波から逃げるために、山側に向かって坂道を必死に走っている夢を何度か見ました。眠りも浅くすっかり生活リズムがくるってしまい、アトピーの人たちならば夜間掻破(そうは)が増えるだろうなと考えていました。

東日本大震災から1週間ぐらい経ったある日、「テレビを見ていて涙が止まらない、自分が阪神大震災を被災したのは3歳の時なのに、その時の光景がよみがえり頭から離れない」と言って、アトピーが増悪した患者さんが来院されました。

また、特筆すべき患者さんと出会いました。その方は乳幼期に全くなかったアトピーが、阪神大震災の影響で家が全壊した直後の17歳から発症したそうです。そして、近年ほぼ軽快していたのに東日本大震災直後より明らかに増悪したとのことでした。その2人の患者さんに出会ってから、来院されるアトピー患者さんにそれとなく震災の影響を聴いてみました。

少なからず東日本大震災をきっかけに増悪したと考えられる患者さんがおられましたが、概ね2群に分かれました。

1群はあたかもフラッシュバックのように阪神大震災がよみがえり、自分でも東日本大震災が増悪の引き金になったと考えている人たち。

2群は私と同じく生活リズムが崩れ、夜間掻破が増えたと考えられる人たちでした。
後者の方たちは、そう言われれば震災が引き金になったかもしれないという程度で、震災を強く意識しておられませんでした。

これらの経験を通じて私が強く感じたのは、記憶すなわち脳と免疫反応の関連ということです。これから記憶と免疫反応、掻破と免疫反応あたりの研究が進むともっとアトピーの治療も進化するかもしれません。
最後に、このたびの東日本大震災に際し、被害に遭われた方、影響を受けた方に心よりお見舞いを申し上げます。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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