阪神大震災とアトピー性皮膚炎 3

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年12月04日 [水]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

戻って来られたアトピー患者さんの話を聴いて印象的であったことは、とにかく入浴できないということがすごく気になった方が多かったことです。親戚にお願いしたり、入浴施設へ車で通ったり、入浴するためにかなりのエネルギーを使われたようです。
ガスが使える近隣の地域へ1時間~2時間かけて入浴のために毎日通ったという方が多くおられました。

阪神大震災は揺れが強かったため、市内の被害が非常に大きく、大渋滞で移動困難でした。しかし、局地的であったため郊外への移動はその気になれば可能でした。それでも日々のことですから、かなりのエネルギーを要したと思います。

震災がアトピー性皮膚炎にどんな影響を与えたのかを知るために、アトピー患者さん346人に住宅被害状況・身体的被害・避難状況・スキンケア・震災直後から6カ月までの症状の推移・自分が考える症状の動きの理由などのアンケート調査を行いました。症状の推移は震災直前を0点とし増悪は+、軽快は-で(上限+100、下限-100)自己評価にて経時的に点数化してもらい解析しました。

詳細は省略しますが、全般的に平均値でみるとアトピーはやや増悪という傾向でした。

約25%の人が地震後早期(直後~2週)に症状が動き(増悪した人が70人・うち著明増悪25例、軽快した人が28人・うち著明軽快12例)、大きく症状が動いた方々が約10%に達しました。早期に症状の動いた方々はその後総じて症状は戻ってゆき、震災後5~6カ月でほぼ震災前の状況に戻ったという印象でした。

特筆すべきことは症状が良くなった人の中に40%も家屋の全半壊した人がいたということ。スキンケア、食の乱れ、身体的被害などの事項が必ずしも有意に影響せず、中には「1カ月も入浴出来なかったのにアトピー性皮膚炎は増悪せず不思議だった。」という人もおられました。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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