脱ステロイドに寄り添って

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年12月01日 [日]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

永年にわたってだらだらとステロイド外用剤を使っていた方が突然中止することで俗にリバウンドと呼ばれるアトピーの急性増悪をきたし、皮疹の湿潤化(じゅくじゅくすること)尿量減少、発汗不全、体温調節不全、不眠、うつ状態、眼合併症(白内障、網膜剥離など)をきたし休学や不登校、休職、退職などを余儀なくされた方を多く経験しました。

仕方がなくステロイドを再開した方々もおられましたが、ステロイド中止後数カ月から1年くらいの間にすごく良くなる方々も大勢出てこられました。
そういう流れ(すなわち当時ほとんどのアトピーの方がステロイドを使っておられた状況で、ステロイドを中止してすごく悪くなりやがてだんだん良くなって来るという現象)をステロイドという観点から見たとき、あたかもステロイドという物質がアトピーの増悪要因であるかのように見えたのだと思います。
その結果、ステロイドにまつわる不安情報が民間主導で現在にまでも語り継がれています。
そして相変わらずステロイドの恐怖をあおって商売している人もいます。

  1. ステロイドは毒でその物質から離れることでアトピーが良くなる。
  2. 一度でもステロイドを使うと一生体内に蓄積し問題を引き起こす。
  3. ステロイドを塗ると色素沈着を引き起こす。
  4. ステロイドを外用すると自分の副腎皮質ホルモンが分泌されなくなる。
  5. ステロイドを中止するとすべての症例でリバウンドが起こる。

などですがもちろん医学的には全く根拠のない情報です。
ステロイドを使わない方々を治療としてお手伝いすることでこの病気の様々な側面を学ばせてもらいました。
少数例のステロイドを全然使用しておられない方のアトピーの増悪時にも脱ステロイドのときと同じような現象が観察されました。

アトピーの増悪自体がもたらすストレスは大変なことで、アトピーがもたらしたストレスか掻くことも相まってまたアトピーを増悪させ悪循環を形成していると考えるようになりました。それらの経験から現在私はステロイド外用剤がアトピーにもたらす影響は以下のように考えています。

顔面に長期に外用を続けて起こる酒さ様皮膚炎や口囲皮膚炎はステロイド剤という物質の持つ問題が大きなウエイトを占めていると思います。
いわゆるリバウンド現象というのは、もともとアトピーがうまくいってなくてステロイドを連用に近い形で使用してゆかなければやっていけないような状況において、症状を抑えていた薬を中止したことでアトピーがぶり返すと考えられます。
さらに不安を伴って増悪したもので、ステロイドという物質の副作用というよりは状況で生じたアトピー自体の増悪であると思います。

生活の質を上げるのがステロイドの長所だと思いますが、良く効くが故に薬以外の良くなる方法が積み上がらないのが最大の欠点だと思います。
次のコラム「ステロイド外用剤、副作用を起こさない工夫」ではステロイドの使い方について述べてみたいと思います

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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