アトピー性皮膚炎のストレス 後編

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年11月24日 [日]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

私が勤務医時代のことですが、アトピーの患者さんに対して、治療に先だって目標設定をするために「アトピーが治ったら今と違ってどんなことが良くなりますか」という質問をしていた時期があります。
この質問の回答にはその方のアトピーが良くなるためのリソースが見え隠れしており非常に重要な質問と考えています。
そしてその回答は良くなる目標であると同時にアトピーにまつわる不安を示しているともいえます。
105例の患者さんにいただいた147の回答を項目別に整理してお知らせします。

1.気分、感情、性格に関することが改善

  • 気持ちが楽になる
  • 単純に嬉しい
  • 人目を気にしなくてすむ
  • 人に優しくできる
  • もっと前向きになる など

2.人生設計に関わることが可能になる

  • 学校に行ける
  • 結婚できる
  • 仕事につける
  • 子供をつくる
  • 資格が取れる
  • アルバイトを始めたい など

3.人間関係にまつわることが改善

  • 親に干渉されずにすむ
  • 子供にかまってやれる
  • 彼氏、彼女ができる
  • 交遊関係が増える
  • 上司に文句を言われなくてすむ など

4.趣味、娯楽、スポーツなどができる

  • 旅行に行くことができる
  • 水泳ができる
  • 外に遊びに行ける
  • 料理ができる
  • 陶芸ができる
  • フラワーアレンジメントをしてみたい など

5.医療に関することを回避

  • 病院に来なくてすむ
  • 薬をつかわなくなる
  • 医療費がかからなくなる

6.その他、日常生活に関して回避していることができたり、面倒なことをせずにすむ

  • 半袖が着れる
  • 化粧ができる
  • 入浴時間が短くてすむ
  • 食べ物を気にせず食べられる
  • 掃除を気にしなくてすむ
  • 良く眠れる
  • ペットが飼える
  • 掻かずにすむ など

以上ですがアトピーにまつわる不安はさまざまな事柄や事象に及んでいることがわかります。
アトピーのように原因が解っていない病気においては、患者さんと医療がそれぞれの体験や経験に関するお互いの意見のすり合わせを行って、不安になる必要のない不安は取り除くことができれば良いし、不安になることが避けられないような出来事に関しては医療は効率の良いサポートをして主役である患者さんが不安を克服できるお手伝いをすることが重要と考えています。

そしてアトピーの不安がさらにアトピーを悪くするという「アトピーと不安の悪循環」から抜け出せるお手伝いができればと考えています。
すなわち、アトピーが良くなって不安が減っても良いし、不安が減ってアトピーが良くなってもいいわけです。

薬に極端な不安がなければ薬の力を借りてアトピーの影響を受けていない人生を目指すことが悪循環から抜け出す手段のひとつだと思いますし、薬の力を借りなくても実現は可能だと思います。
是非皆さんもアトピーを自分の人生から追い出せたら今とどんなことが変わってくるのかを想像してみてください。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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