紫外線療法 2

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2015年8月06日 [木]

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波長の長さによって、大きく2種類の治療に分かれます

紫外線には、波長が長いA波と短いB波があります。紫外線療法のうち、おもに行われているのが、A波を用いるPUVA(プーバ)療法と、B波のなかでも治療効果の高い特殊な波長(311~312nm)を照射するナローバンドUVB療法です。

PUVA療法では、ソラレンという液体の入ったお風呂(ふろ)に浸かって紫外線を吸収する成分を体に染みこませたり、体に直接塗ったりしたあと、日焼けマシンのような専用の紫外線照射装置に入り、紫外線を浴びます。最初の照射時間は短く、10秒、20秒としだいに長くしていきます。これを1日おきに3~4週間繰り返します。

ナローバンドUVB療法は、照射前の準備がいらず、PUVA療法より簡単にできる治療法です。照射は30秒くらいから始めて1~5分程度まで20%ずつ増やしていき、3週間毎日続けます。ナローバンドUVB療法より前に開発されたブロードバンドUVB療法(B波の290~320nmを照射する)も効果があり、一般診療ではしばしば使用します。紫外線療法は、最初は入院して行い、途中から通院で続けるのが一般的です。

PUVA療法は重症のアトピー性皮膚炎に対して効果があり※7ナローバンドUVB療法は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して効果が認められています※8

しかし、紫外線療法は、紫外線を用いるだけに皮膚がんの発症のリスクが高くなるという問題が指摘されており、紫外線療法を行うときは、治療回数が限られています。また、タクロリムス外用薬を使用しているときは治療はできません。

アトピー性皮膚炎のナローバンドUVB療法

(※7)Yoshiike T, Aikawa Y, et al. :A proposed guideline for psoralen photochemotherapy(PUVA) with atopic dermatitis: successful therapeutic effect on severe and intractable cases. J Dermatol Sci 5: 50-53, 1992
【概要】
13歳以上で、従来の治療法に反応しない重症のアトピー性皮膚炎の患者さん114人に対するPUVA療法の症例研究。入院患者さん(48人)には連日PUVA療法を行い、外来患者さん(66人)には週1回PUVA療法を行って、その効果を検討しました。その結果、入院患者さんでは81%、外来患者さんでは67%の人に顕著な症状改善が認められました。

(※8)Reynolds NJ, Franklin V, Gray JC, Diffey BL, Farr PM. Narrow-band ultraviolet B and broad-band ultraviolet A phototherapy in adult atopic eczema: a randomized controlled trial. Lancet 357(9273): 2012-2016, 2001
【概要】
16~ 65歳の、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さん73人に対し、ナローバンドUVB、UVA、可視光線をそれぞれ連日照射する3群に分け、ステロイド外用薬などを使った従来の治療法と併用してランダム化比較試験を行いました。10日間後に効果をみたところ、ナローバンドUVBとUVAは、可視光線と比べるとどちらも症状の改善がみられましたが、ナローバンドUVBのほうがUVAよりも効果がすぐれていました。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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