ステロイド外用薬 3
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2015年1月22日 [木]
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ステロイド外用薬の副作用について
「ステロイド外用薬は、副作用がこわい」。こんなイメージをもっている人は、少なくないでしょう。しかし実際は、塗り薬のステロイド外用薬が皮膚から吸収されても、血液中に入る量はごくわずかです。全身に作用する飲み薬や注射剤と比べて、副作用は少なく、正しい量を使っていれば、ほとんど問題ないことがわかっています。
では、どれくらいの量を使用したら、副作用が出てくるのでしょうか。
ステロイド外用薬の標準的な使い分けについて報告したある調査では、ストロングクラスのステロイド外用薬を1日20g(チューブ4本分・大人の手80枚分の面積の使用量に相当する)使った場合、全身性の副作用がおこる可能性があると報告されています。
また、チューブ1本以上のステロイド外用薬を毎日、3カ月以上塗り続けると全身性の副作用が出ることもあります。しかし、このような使用量は、専門医のもとで治療を進める限り、まずありえない量です。
ステロイド外用薬による副作用には、塗った部分に現れるものと全身性のものがあります。部分的に現れる副作用としては、皮膚が薄くなる、多毛、血管の拡張、ニキビ、感染症などがみられます。前述の調査は、いずれも全身に現れる副作用についてで、ムーンフェイス(顔が丸くなる)、糖尿病、骨粗しょう症などを示すといわれています。
しかし、ステロイド外用薬は、よほどのことがない限り、多量に長期間塗り続けるような使い方はしません。ステロイド外用薬は決められた量を塗って、定期的に医師の診察を受けている限り、問題はほとんどおこらないのです。
とはいえ、適量を塗っていても副作用が出てしまう場合があります。下記の表に示した部分的な副作用は、ステロイド外用薬をやめると半年ほどで治りますが、このなかの皮膚線条(せんじょう)(皮膚が薄くなって裂け、妊娠線や成長線のようなものができる)だけは、一度できると元には戻りません。皮膚線条は、わきの下、そけい部(脚のつけ根)、陰部などにできやすいため、注意が必要です。

また、治療を進めていくと、皮膚が黒くなって色素沈着することがあります。これを副作用と勘違いする人が多いのですが、皮膚の炎症が治ってきたためにおこるもので、ステロイド外用薬による副作用ではありません。
ただし、ステロイド外用薬は、まぶたに塗ると緑内障を発症する可能性があります。顔に使用する際には注意しましょう。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。