13歳以上の治療はこのように進められます

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2014年12月04日 [木]

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一般に大人のアトピー性皮膚炎は治りにくいといわれますが、医師の指導のもと、正しい治療を続けることで着実に回復に向かいます。まずはスキンケアを続けて全身を十分に保湿し、皮膚の乾燥を防ぎましょう。そのうえでステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を使用します。外用薬だけでは症状が抑えきれない場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を併用します。

また、最重症・重症の患者さんでは、これらの治療だけでは改善しない場合があります。このようなケースでは、紫外線療法を行ったり、免疫抑制薬やステロイド薬を服用したりするなどの治療法を試みて、回復を図ります。

ステップ1 アトピー性皮膚炎かどうか診察します

問診と触診による診察を行います。問診では患者さん本人に「かゆみ」「皮膚の状態」「発症してからの経過」のほかに家族歴や既往歴なども聞きます。かゆみの程度を数字で示すVASや質問票を渡して、記入してもらうこともあります。また、くわしく診察するために血液検査を行って、IgEや好酸球の量を調べることもあります。

ステップ2 保湿外用薬やステロイド外用薬などで治療します

アトピー性皮膚炎と診断がついたら、保湿外用薬を1日2回、できるだけ体全体に塗ります。最初に保湿外用薬をしっかり塗ることで、低下した皮膚のバリア機能・生理機能を補います。

軽症の場合、治療は保湿外用薬によるスキンケアが中心になります。

13歳以上になると、皮膚が厚くなり、薬の効き目成分が浸透しにくくなることから、中等症最重症・重症ではベリーストロングクラス以下のステロイド外用薬を使用します。ただし、薬の吸収率の高い顔や首には、ミディアム(マイルド)クラス以下を用います。ステロイド外用薬を塗り始めると、かゆみや赤みなどの症状は3~4日でおさまってきます。そのあとは硬くなっているところだけに塗るようにします。硬くなった皮膚には、かゆみをおこす物質がまだ残っているため、薬を中止するとぶり返します。ステロイド外用薬は途中でやめずに続けて塗るようにしましょう。

治療開始 ステロイド外用薬の目安

【中等症、最重症・重症】
ベリーストロングクラス以下 1日1~2回、適量塗布
顔や首などは、ミディアム(マイルド)クラス以下 1日1~2回、適量塗布

かゆみや炎症が強い患者さんには、ステロイド外用薬のほかに補助療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を処方します。薬は決められた量を服用します。ただし、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は、妊娠中や授乳中の女性は使えません。

ステップ3 治療でよくなってきた場合

治療が順調に進むと硬くなっていた皮膚も3週間ぐらいでやわらかくなり、健康な状態になります。ここまできたら次のステップです。

保湿外用薬によるスキンケアはそのまま続けて、中等症最重症・重症ではステロイド外用薬を塗る回数を減らします。または、ステロイド外用薬を一つ弱いストロングクラスに変更することもあります。

回復期 ステロイド外用薬の変更の目安

【中等症、最重症・重症】
ストロングクラスに変更 1日1~2回、適量塗布

顔や首など薬の吸収率が高い部位には、ステロイド外用薬は長く使えないため、タクロリムス外用薬(商品名プロトピック軟膏)に切りかえ、胴体や手足にも試してもらいます。ただし、タクロリムス外用薬は、妊娠中や授乳中の女性は使用することができません。治療中に妊娠や出産を希望する場合は、医師に相談しましょう。

タクロリムス外用薬の使用量の目安

・プロトピック軟膏(小児用0.03%軟膏)
13歳~15歳(体重50kg以上)1日2回、1回の塗布量は5gまで
・プロトピック軟膏(大人用0.1%軟膏)
16歳以上 1日2回、1回の塗布量は5gまで

抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は、飲む回数をゆっくりと減らすか、症状が出たときだけ服用するようにします。

タクロリムス外用薬の使用上の注意

ステップ4 症状が変わらない、または悪化した場合

スキンケアは継続します。診察してあらためてステロイド外用薬を塗る量や回数をチェックします。

軽症の場合、かゆみや皮疹が現れたらストロングクラス以下のステロイド外用薬を塗ることもあります。かゆみが強いときは、補助療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用します。

中等症最重症・重症では、ベリーストロングクラスの別の種類のステロイド外用薬に変更して様子をみます。悪化したときは、症状がとくにひどい部位だけに薬の作用が一段階強いストロンゲストクラスを一時的に使います。また、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の服用は、そのまま続けます。

症状がよくなり、皮膚にタクロリムス外用薬を塗ることが可能であれば、顔や首のほかに胴体や手足にも試してもらいます(ただし、妊娠中や授乳中の女性は使用できません)。ステロイド外用薬は、症状のひどいところのみに塗ります。

悪化した場合 ステロイド外用薬の目安

【軽症】
ストロングクラス以下 1日1~2回、適量塗布

【中等症、最重症・重症】
ストロンゲストクラスに変更 症状の強い部位に一時的に1日1~2回、適量塗布

なお、最重症・重症でこれらの治療をしても改善しないときは、紫外線療法や、免疫抑制薬、飲み薬のステロイド薬を用いた治療を試みます。入院して治療する場合もあります。

なかなか改善しない場合 免疫抑制薬とステロイド薬の服用量の目安

【免疫抑制薬】
・シクロスポリン(商品名ネオーラル)
1日2回 1日に体重1kg当たり3mgから開始

【ステロイド薬】
・プレドニゾロン(商品名プレドニン、プレドニゾロン)
1日に5~15mgから開始
・ベタメタゾン(商品名リンデロン)
1日に0.5~1.5mgから開始

症状が改善しない場合に試みる治療法

ステップ5 治療の終了または継続・症状の安定

かゆみや皮疹が出なくなり、保湿外用薬やタクロリムス外用薬を塗るのみで日常生活に支障がない状態まで回復したら治療のゴールです。

13歳以上では、思春期や大人の患者さんが中心になりますが、この年代はストレスが多岐にわたり、ささいなことが要因となって再発することもあります。そのため、軽症だった患者さんではストロングクラス以下、中等症最重症・重症では、ベリーストロングクラス以下のステロイド外用薬を常備し、必要に応じてすぐに使用できるようにしておくと安心です。また、完全にぶり返した場合は、早めに医療機関で診察を受けましょう。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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