2歳未満の治療計画
[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
2014年9月19日 [金]
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ステップ1 診察・検査
当日
- ほかの病気ではないことをしっかりとチェックします。
- 診断基準と重症度分類に基づいて、問診や触診で診察します。問診はつき添いの両親などから話を聞きます。診断はその日のうちにつきます。
- 血液検査でIgE(※)や好酸球(※)の量を調べることがあります。
※IgE
アレルギー反応がおこったときに体内でつくられる抗体で、アトピー性皮膚炎の患者さんは多量になる場合があります。
※好酸球
白血球の一種で、炎症やアレルギー反応があると増えます。アトピー性皮膚炎の患者さんは多量になる場合があります。
ステップ2 スキンケアと薬物療法
1、2週間~2カ月
- スキンケアのため、全身に保湿外用薬(※)を塗って皮膚の乾燥を防ぎます。
軽症
1、2週間、スキンケアのみで様子をみます。
中等症
ミディアム(マイルド)クラス以下のステロイド外用薬(※)を塗ります。
最重症・重症
ストロングクラス以下のステロイド外用薬を塗ります。顔や首は皮膚からの薬の吸収率が高いため、ミディアム(マイルド)クラス以下を使います。
中等症 最重症・重症
抗ヒスタミン薬(※)や抗アレルギー薬(※)を補助的に用いることがあります。
※保湿外用薬
乾燥した皮膚の保湿力を高めて、低下した角層(角質層)のバリア機能を回復させます。アトピー性皮膚炎のスキンケアに欠かせないもので、軟膏(なんこう)、クリーム、ローションなどのタイプがあります。
※ステロイド外用薬
皮膚におこった炎症を抑えるステロイドの塗り薬。アトピー性皮膚炎では、薬効の強さを5段階に分けたステロイド外用薬を症状や部位、年齢などによって使い分けます。
※抗ヒスタミン薬
かゆみの原因の一つであるヒスタミンの働きを阻止してかゆみを抑えます。抗ヒスタミン薬には、第一世代と第二世代があり、後者は服用後、眠気をおこす副作用が少ないという特徴があります。
※抗アレルギー薬
肥満細胞の生理活性物質の分泌を抑えてかゆみを止めます。かゆみがある場合、症状をやわらげる補助療法として使われます。
ステップ3 治療効果の確認(1)
よくなってきた場合 およそ3週間おき
- 症状が安定して悪化がみられない場合は、スキンケアを続けます。
軽症
スキンケアを継続します。
中等症
ステロイド外用薬をウィーククラスに変更したり、塗る回数を減らしたりします。抗ヒスタミン薬などは、飲む回数を減らし、症状があるときだけ服用します。
最重症・重症
ステロイド外用薬をミディアム(マイルド)クラスに変更します。塗る回数を減らしていく方法もあります。抗ヒスタミン薬などは、飲む回数を減らし、症状があるときだけ服用します。
ステップ4 治療効果の確認(2)
よくならない場合 およそ3週間おき
- 症状に変化がない、または悪化した場合もスキンケアは続けます。
- 食物アレルギーの合併が疑われるときは、皮膚試験(※)を行うことがあります。食物アレルギーを合併している場合は、アレルゲンになる食べ物を制限します。
軽症
かゆみが現れたら一時的にミディアム(マイルド)クラス以下のステロイド外用薬を塗ります。治療効果をみてストロングクラスのステロイド外用薬を塗ることもあります。かゆみが強いときは、補助的に抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用します。
中等症
症状が変わらないときは、ステロイド外用薬の量や塗る回数を増やします。または、ミディアム(マイルド)クラスの別の種類のステロイド外用薬に変更することもあります。悪化した場合は、その部位だけにストロングクラスを一時的に塗ります。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は服用を続けます。
最重症・重症
症状に変化がない、または悪化した場合、ステロイド外用薬は同じクラスの別の種類の薬に変更します。悪化した部分だけに一時的に、ベリーストロングクラスを塗ります。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は服用を続けます。
最重症・重症
症状が改善しない場合は、入院治療を検討することもあります。
※皮膚試験
アレルギーの原因となっているアレルゲン(抗原)を突きとめる検査。皮内テスト、スクラッチテスト、パッチテストなどがあります。
ステップ5 治療の終了または継続
寛解、症状の安定
- かゆみや皮疹がほとんどなくなり、保湿外用薬だけで過ごせるようになったら、これが寛解(※)です。
軽症
ステロイド外用薬の使用はやめます。寛解後もスキンケアを続けて皮膚の乾燥を防ぎます。
中等症 最重症・重症
寛解後、症状が現れたらミディアム(マイルド)クラスやウィーククラスのステロイド外用薬を塗って再発を防ぎます。
※寛解(かんかい)
アトピー性皮膚炎では、かゆみや炎症などがほとんどなくなり、日常生活に支障が生じなくなった状態をいいます。この状態が治療の目標となります。
(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)
古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。