治療の基本は、保湿外用薬を使ったスキンケアです

[これが基本となる正しい治療です] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2014年8月21日 [木]

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次に、スキンケアに欠かせない保湿外用薬についてお話ししましょう。

保湿外用薬には、皮膚のうるおいを保つヒアルロン酸やケラチナミンなどの保湿成分がふくまれ、低下した皮膚の保湿力を高めて、バリア機能を回復させます。代表的な保湿外用薬とその特徴は、下記の図に示したとおりです。軟膏(なんこう)、クリーム、ローションなどの種類があり、病院で処方される医薬品のほか、ドラッグストアなどで購入できる市販の製品(医薬品、医薬部外品)などがあります。皮膚に塗った使用感は、サラサラしたタイプ、しっとりしたタイプ、皮膚にしっかりつくタイプなどに分かれます。

アトピー性皮膚炎の重症度は変化します

アトピー性皮膚炎は、気温や湿度などによって皮膚の状態が大きく変わります。保湿外用薬は、気に入った使用感のものを2~3種類用意して、季節、気温、湿度、体調、皮膚の状態、体の部位などに合わせて使い分けるようにしましょう。

スキンケアで保湿がきちんとできると、皮膚の状態がとてもよくなります。症状が安定した軽症のアトピー性皮膚炎なら、保湿外用薬によるスキンケアだけですむことも少なくありません。

保湿外用薬の塗り方の基本

アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚が乾燥しやすいため、スキンケアで十分に保湿をしないと薬物療法が順調に進みません。保湿外用薬を塗るときは、次の3つの基本を覚えておきましょう。

  • 保湿外用薬は、1日に何回塗ってもよい
  • シャワーや入浴のあと、5分以内に塗る
  • 入浴できないときは、霧吹きで皮膚にぬるま湯を吹きかけたり、市販の化粧水(刺激のないものを用いること)などをつけたりしたあとに塗る
アトピー性皮膚炎の重症度は変化します

保湿外用薬は、治療に用いるステロイド外用薬やタクロリムス外用薬とは異なり、使用量に制限がないので、1日に何回塗ってもかまいません。また、塗るタイミングは、できればシャワーや入浴後、5分以内がよいでしょう。なぜなら、保湿外用薬は皮膚に水分を与えるわけではなく、皮膚の表面にある水分を閉じ込めて外に逃さない働きをするものだからです。乾燥した皮膚に保湿外用薬を塗るとたしかに一時的にはしっとりしますが、すぐに乾くので保湿効果が得られないのです。そこでシャワーや入浴後5分以内が効果的である、ということになります。

また、シャワーや入浴ができないときは、霧吹きなどで皮膚にぬるま湯を吹きかけたり、市販の化粧水をつけたりして、皮膚の表面に水分を補い、その上から保湿外用薬を塗ります。

保湿外用薬は、毎日のスキンケアとして欠かさずに、習慣にしてください。症状の改善だけでなく、予防効果もあるからです。アトピー性皮膚炎の症状がほとんど出ない寛解(かんかい)の状態(症状がほとんどなく日常生活に支障がない、あるいは症状が少しあってもあまり悪化しない)になっても、塗り続けるようにしましょう。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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