治療のポイントQ&A 3

[これだけは聞いておきたい治療のポイントQ&A] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年12月15日 [木]

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ウェットラップ法という治療について、教えてください。

ウェットラップ法とは、皮膚の保湿効果を高める方法の一つで、皮膚のバリア機能の弱い重症・最重症の患者さんに行われることがあります。保湿外用薬やステロイド外用薬で治療をしているにもかかわらず強いかゆみがある場合、この治療を行うと、皮膚をかく回数が減るといわれています。やり方は、入浴して保湿外用薬やステロイド外用薬を塗ったあと、お湯かぬるま湯で湿らせた下着、手袋、靴下(衣類は包帯状の専用の布でできたもの)を着用します。その上から乾いた専用の布を身につけて、2~3時間ほどその状態を保ちます。

ウェットラップ法については、臨床試験によってその効果が確かめられていますが、これは保湿外用薬やステロイド外用薬などの治療をしている人を対象に、ウェットラップ法を行った場合と行わない場合を比較した結果です。症状の改善には、やはり、保湿外用薬やステロイド外用薬の塗布など、基本の治療はきちんと行っていくことが欠かせません。

ビオチンや乳酸菌などがよいと聞きました。本当に効くのでしょうか。

ビオチン(ビタミンB群の一つ)、乳酸菌とも、その効果を確認した臨床試験はありません。ただし、私のこれまでの臨床経験上、乳酸菌(ドリンクタイプのもの)に限っていえば、個人で購入したものを飲んで症状が改善した人は数人います。ビオチンでは、そのような個人の例も今のところ経験していません。

もちろん、乳酸菌を飲んでよくなった患者さんも、保湿外用薬やステロイド外用薬などの治療をしっかりとやっています。乳酸菌を飲んだだけで症状が改善したわけではありません。あくまでも、治療のベースは保湿と薬物療法であることを忘れずに、乳酸菌は補助的に飲むようにしましょう。

レーザー治療があると聞きました。効果はあるのでしょうか。

アトピー性皮膚炎そのものの症状に対するレーザー治療の有効性については、今のところ臨床試験で確かめられていません。

ただ、アトピー性皮膚炎が治ったあとに首などに残ったシミのようなもの(炎症後色素沈着)に対しては、Qスイッチレーザー(メラニンなど黒色に反応するレーザー)を照射する治療が行われることがあります。また、ステロイド外用薬の副作用でおこる毛細血管拡張(毛細血管が広がり、網目状などになる状態。赤ら顔の原因にもなる)に、ダイレーザー(血液中のヘモグロビンなど赤色に反応するレーザー)による治療を行うこともあります。

いずれにしても、アトピー性皮膚炎の人はもともと皮膚のバリア機能・生理機能が弱いので、レーザー治療は非常に慎重に行わなければならず、まずごく小さな範囲でテスト照射をして、皮膚の状態を確かめてから、照射する範囲を徐々に広げていくような方法をとることになります。

レーザー治療を行っていない皮膚科も多いので、現在受診している施設で治療できないときは、担当医にレーザー治療を専門的に行っている病院やクリニックを紹介してもらうとよいでしょう。

化粧品が自分に合うか知りたいです。パッチテストのやり方を教えてください。

パッチテストとは、ある成分に対してアレルギー反応がおこらないかどうかを調べる皮膚試験の一つで、もっとも手軽な方法として知られています。皮膚科で行われていますが、化粧品や石鹸(せっけん)などにふくまれる成分が気になるときは、家庭でも試すことができます。パッチテストのやり方は、次のとおりです。また、パッチテストで皮膚になにも症状が出ていないときは、アレルギー反応はおこっていませんので、その化粧品は、使うことができます。

  1. ふだんかぶれないガーゼつきばんそうこうを用意します。
  2. 使用したい化粧品などを少量、ガーゼつきばんそうこうに塗って腕の内側にはります。
  3. 24~48時間そのままにしてガーゼつきばんそうこうをはがし、塗ったところにかゆみや赤み、発疹(ほっしん)が出ていないか確認します。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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