治療のポイントQ&A 2

[これだけは聞いておきたい治療のポイントQ&A] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年12月01日 [木]

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6カ月の乳児です。アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを合併しているかもしれません。まずはどこで診みてもらったらよいでしょうか。

食物アレルギーのガイドライン(厚生労働科学研究班「食物アレルギーの診断の手引き2005」)では、わが国における食物アレルギーの有病率は、乳児が5~10%、学童以降が1.3%で、全体で1~2%と推定されています。

乳児で食物アレルギーがある場合、多くはアトピー性皮膚炎を合併しています。
このようなケースでは、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎に対する治療を並行して行う必要があるため、まずは皮膚科またはアレルギー科で診てもらい、きちんと診断を受けることがたいせつでしょう。アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを合併していることがわかった場合、軽症(アレルゲンが1個程度)であれば、皮膚科で両方の治療をすることができます。重症(アレルゲンが複数ある)のときは、皮膚科やアレルギー科で治療を続けながら、小児科でも診療することになります。

年齢別 食物アレルギーの原因となるおもな食物

子どもが抗ヒスタミン薬を飲みたがりません。どうしたら飲んでくれますか?

子どもは、大人とは違って錠剤やカプセル剤を飲み込むことがむずかしいため、飲みにくい場合は、シロップや粉薬タイプの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬にします。薬を嫌がるときは、無理やり飲ませるのではなく、オレンジジュースやヨーグルトなどに混ぜてあげると嫌がらずに飲んでくれます。これらと混ぜても薬の効果には影響はないので、飲みやすさを優先しましょう。

治療中でも妊娠はできますか?また、妊娠したら、治療はどうなりますか?

アトピー性皮膚炎の患者さんもふつうに妊娠・出産することができます。ただし、妊娠中や授乳中は、タクロリムス外用薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬は使えません。これらの薬は、胎児や乳児になんらかの影響を及ぼす可能性があるからです。治療でこれらの薬を用いているときに妊娠を希望する場合は、かかりつけの医師に相談したほうがよいでしょう。

また、妊娠中は、ほとんどのケースでアトピー性皮膚炎の症状が悪化します(ごくまれに、びっくりするぐらい症状がよくなる女性もいます)。しかし、妊娠中や授乳中もステロイド外用薬は塗り続けることができるので、担当医と相談しながら治療を進めていきましょう。

妊娠中に食事を制限したら、子どものアトピー性皮膚炎は予防できますか?

妊娠中の食事と子どものアトピー性皮膚炎の発症にはなんの関係もありません。

アトピー性皮膚炎になりやすい体質は遺伝するので、母親や父親がアトピー性皮膚炎だと、子どももなりやすいことは確かです。そのため、子どものアトピー性皮膚炎を予防しようと、妊娠中にアレルゲンになりやすい卵などの食べ物を制限する母親もいます。しかし、医学的に証明されていることではありません。気持ちはわかりますが、妊娠中は栄養のバランスのよい食事をしっかりと食べて、なるべくストレスのかからない生活を送ることです。それがなにより、おなかのなかの赤ちゃんのためになります。

血液検査でダニに対してIgEが高いことがわかりました。ダニを寄せつけないふとんなどを買うべきでしょうか?

アレルゲンというのは、その人に皮疹(ひしん)やかゆみなどのアレルギー反応をもたらす特定の物質のことをいいます。アレルゲンを調べる方法に、原因と思われる物質に対してIgEがどれくらいあるかをみる血液検査があります。

しかし、健康でも3割の人はIgEをもっていたり、もっていてもアレルギー反応が出なかったりすることがわかっています。そのため、IgEの量が多いからといって、高価なふとんやカーペット、掃除道具などを買う必要はまったくありません。なによりアレルゲンを完全に除去することは、不可能です。外出すれば、大気中に浮遊するたくさんのアレルゲンに、いやおうなしにふれることになるからです。

検査の結果からアレルゲンがわかっても、神経質にならないことがたいせつです。常に室内をきれいに保ち、体を清潔にしておくという対策でまずは十分でしょう。難治性の場合には、医師がダニ対策の指示を出すこともあります。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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