アトピーを悪化させないための食事-アトピーと上手く付き合うための99.9%の過ごし方-

[アトピー・ノート] 横井謙太郎

2016年5月11日 [水]

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アトピーと上手く付き合うために、アトピー性皮膚炎患者さんは、日常生活で何を考え、どんな工夫をしているのでしょうか。自らもアトピー性皮膚炎の患者で、患者さんの集い「アトピーサロン」を主宰するNPO法人「アトピーを良くしたい」代表の横井謙太郎さんが、診療以外の時間の割合である「99.9%」の過ごし方のコツを3回連載で紹介しています。「アトピーと掃除」がテーマの第1回に続いて、2回目は「アトピーと食事」についてです。

食物アレルギーを持つアトピー患者は多いのか?

アレルゲンになる食べ物

厚生労働科学研究班の「食物アレルギーの診療の手引き2014」によると、日本の食物アレルギー有症率は、乳児が約10%、3歳児が約5%、そして全年齢を通して、日本では推定1~2%程度の有症率であると考えられています。一方、アトピーサロン内で「食物アレルギーがありますか?」というアンケートをとったことがあります。結果は、84人のアトピー有症者のうち7人(約8%)が食物アレルギーということでした。

食物アレルギーは、原因物質を調べ除去するという考え方が一般的でしたが、最近では専門の医師の指導のもと徐々に食べて取り入れるという治療法も注目されています。アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは全く別の疾患として診察されますが、アトピーの人にとっても食事はとても関心があるものです。

白米と玄米、どちらがいいの?

玄米と白米

食物アレルギーとは異なりますが、「ご飯は白米がいいのか、玄米の方がいいのか?」という質問をよく受けます。玄米に関しては体質に合う合わないがあるので、私は無理に変える必要はないと思っています。玄米にしてみたい方は、まずは玄米の栄養素を残しつつ食べやすく精米された、7分づきや5分づきなどの「分づき米」から試してみるのもいいですね。ただ、普通の玄米に比べ酸化しやすいので、精米したてを少しずつ購入するなどの工夫が必要でしょう。

アトピーを良くする食事、栄養士や医師はどう考える?

「アトピーを良くする食事」について、まずは専門家の意見を聞きました。

栄養士 中村亜希子さん(NPO法人「アトピーを良くしたい」理事)

バランスの良い食事

バランスの良い食事を続けたからといって、すぐにお肌がツルツルになるとは限りません。なぜなら、食生活が骨や細胞、血液などに影響を及ぼすまでの期間にはバラつきがあるからです。皮膚のために、表面的な栄養を摂るのではなく、身体の組織をしっかりと作り上げるための栄養素を摂らなければいけません。

皮ふ科しみずクリニック院長 清水良輔先生(NPO法人「アトピーを良くしたい」理事)

おやつを食べる親子

一般的に加工食品やお菓子、添加物などは、健康にあまり良くないと言われています。しかし、食べたいものを我慢するということはストレスもかかりますし、長続きしないものです。ただ、あの食品をやめましょうではなく、足りないものがあるから摂りましょう、という考え方を大切にしています。これは、オーソモレキュラー(分子整合栄養医学)の考え方に基づくものです。オーソモレキュラー療法とは、ご飯やパンなどの糖質を制限して、たんぱく質である肉や魚の摂取量を増やし、足りない栄養素は積極的にサプリメントで補うという、今アトピーやアレルギー界でも広がりを見せている栄養医学です。

食事ではどんなことに気を使っている?~アトピーサロンで聞きました~

先日アトピーサロンで、「アトピーを良くするために、もしくはアトピーを悪化させないための食事とは?」というテーマでグループワークを行ないました。食材選び、調理法、外食などで気を使っているアイディアをシェアすることが目的です。3つのグループに分かれてそれぞれ意見を出し、それぞれに「一番大切だと思うこと」を発表してもらいました。

値段を気にせず無農薬の自然な食材を買う。治療費を考えるとその方が安い。

野菜

値段の安い加工食品や輸入品ではなく、少し高くても無農薬の野菜や果物を選ぶというもの。農家が自然のものを自然のままに消費者に提供するには、その分コストがかかります。だからといって安いものばかり食べ続けると、その結果、アトピーの症状が悪化したときにかかる治療費の方が高くつくのではないか?という考え方です。

また、症状が悪化しているときは、自宅に食材が届くサービスを利用しているという方もいらっしゃいました。人目を気にしながら無理に出かけるより、少し割高でも、食べる分だけ食材が運ばれてくる方が精神的にかなり楽ですよね。

糖分の摂りすぎはダメ。でも、ストイックになりすぎないように!

あまいもの

あれもダメこれもダメとストイックに制限していると、かえってアトピーの症状が悪化するのではないか?という考え方です。その制限がストレスとなり症状が悪化してしまっては本末転倒ですから、何事も自分のペースで続けられるものがいいですね。

アトピーサロンでも、お菓子やジュースなどの糖類を摂りすぎると、皮膚がかゆくなると言う方が多いように思います。家で調理する際は精製された上白糖ではなく、きび糖やてんさい糖などの未精製のものを使っている方が多いです。子どものおやつには、ハチミツやメープルシロップで甘さを出すという方もいます。

おいしく!楽しく!食べよう!

楽しい食事

どんなに身体に良い食事でも、嫌々食べたらストレスになるし、逆にどうしても食べたい物を、食べずに我慢しすぎてもストレスになります。人は美味しいと感じて食事すると、消化・吸収率が上がるそうです。極端に制限などするのではなく、食品の品質に気をつけながら、毎日の食事を楽しむこと。これが、アトピーが良くなる近道なのではないか?という意見ですね。

「食事はなぜ大切なのか?」、「アトピーにとって良い食事とは何か?」を一緒に考えていきましょう。

横井謙太郎

NPO法人アトピーを良くしたい代表
生まれつきアトピー性皮膚炎があり、重度の症状に苦しんだ時期もあったが、現在は軽度まで改善。様々な治療を試し、今度は自分が支えになりたい「100人のアトピーの人がいたら、100通りの良くなり方がある」との想いからNPO法人を設立。アトピーサロンの定期的な開催、アトピーの人たちの夢を叶える「ドリームウィッシュプロジェクト」をはじめ、最近はメンタル面のサポートとしてカウンセリング事業にも注力。
NPO法人アトピーを良くしたい(http://atopyrecording.org/)

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