アトピーを悪化させないための掃除術 -アトピーと上手く付き合うための99.9%の過ごし方-

[アトピー・ノート] 横井謙太郎

2016年3月14日 [月]

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アトピー性皮膚炎患者にとって、医師と直接コミュニケーションする時間は日常生活全体の0.1%以下といっても過言ではありません。つまり、残りの99.9%は「自分で考え、自分で工夫し、自分で守る」生活を過ごさなければならない、ということ。自らもアトピー性皮膚炎の患者で、NPO法人「アトピーを良くしたい」代表の横井謙太郎さんが、同NPOで定期的に開催している患者さんの集い「アトピーサロン」等で集めた、「99.9%の過ごし方」のコツを3回連載で紹介します。1回目のテーマは「掃除」です。

基本中の基本「掃除機をまめにかける」

「掃除」は「アトピーサロン」でも関心が高いテーマで、TwitterやFacebookなどでもよくシェアされています。掃除を上手くやること、それは、掃除機などの家電を上手く使うことといっても過言ではありません。

掃除機

アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、最も気になることの1つは、皮膚の角質がぽろぽろと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」です。こまめな掃除で、部屋やオフィスなどを清潔な状態にする。当たり前かもしれませんが大切なことです。
アトピーの人でも仕事をしている人は、週末に一気に掃除をするという人が多いです。また、時間があったとしても毎日続けられるコツというのは意識的なものであって、うまいテクニックはなかなかないものです。

人気の掃除家電 ダイソン・レイコップ・ルンバの印象は?

お掃除ロボット

ダイソンの掃除機は空気清浄機と同じレベルのフィルターを使っているそうです。キャッチコピーと同じ「排気がきれい」という声を患者さんからよく聞きます。

続いて、ベッド用の掃除機のレイコップ。こちらもアトピーの人の利用者が多くいました。一番のウリはダニの死骸などがきれいに掃除できることですよね。ただ「効果はどう?」と聞くと、大抵は「良いような気がする…」という返答です。

最後に、ルンバです。ルンバのような、掃除ロボットが掃除しやすい環境を作ることができるか?を表す”ルンバブル”という言葉が流行りました。アトピーサロンでもルンバブルについて話が出てきましたし、住宅業界でもルンバブルな設計が注目されています。例えば、ベッドの下にもルンバが入るようベッドの高さを考える、毛足の長いカーペットは置かないなどです。

床拭き

ハウスダストに関する花王株式会社の研究では、ホコリが舞うと床に落ちるまで1~2時間くらいかかるそうです。それに、少し古い掃除機になると、排気からは臭いがするし、ホコリが舞います。そのため、アトピーの人たちの中には、掃除機の排気口をバルコニーや部屋の外に出して掃除をするという方もいます。また、「クイックルワイパー」などの簡易モップでホコリが舞うことを避けるのも効果的です。

一昔前は、アトピーの原因はダニなのではないか?と言われたことがあります。しかしダニ神話は崩壊しています。医学的なエビデンスは1つもないし、ダニを退治することでアトピーが良くなった!という人は、アトピーサロン内では1人も聞いたことがありません。それよりも重要なことは、「掃除すると気分が良い」という気持ちです。アトピーに良さそう、カラダに良さそうという直感的なものが、アトピー改善につながっていくと思っています。

空気清浄機や加湿器は?その他の掃除術は?

加湿器

掃除の目的であるホコリが、なるべく室内に舞わないこと。そのために、空気清浄器や加湿器を取り入れているアトピー患者さんもいます。アトピーサロンでも聞いたところ、半数のアトピー患者さんが「空気清浄機も加湿器も使っている」ことが分かりました。ただ、空気清浄機や加湿器自体の掃除は、意外に手間がかかることも知っておいた方が良いですね。

その他にもアトピー患者さんからは、ユニークな意見やアイディアが出ました。
それは「友人をあえて自宅へ招待する」ということ。掃除を続けなければならないという思考を捨て、好きな友人を自宅へ招待するというシェアをした人がいました。
人を自宅に呼ぶことで、掃除をして、きれいにせざるをえない状況をあえて作るというのです。この発想は私自身もなるほど!と感心しました。

また、断捨離も重要です。まず、モノが減ることで、普段の掃除そのものが楽になります。さらに、気分がすっきりするということも。
物の置き場所を決めておく習慣も重要です。帰宅して着替えるとき、つい着ていた服を椅子にかけてしまう、ソファーに置いてしまう。だれにでも経験があると思います。脱いだ物は洗濯カゴへ、アウターはハンガーへ。例えば、リモコンはここへ、電池はここへなど、場所を決めておくことも有効です。ルール化することで、掃除の手間が大きく省けることでしょう。

風呂の掃除は塩素系カビ取り剤よりも重曹を

重曹

風呂の掃除は浴室用洗剤や塩素系カビ取り剤など、洗剤を使うことが一般的です。アトピー患者さんで、手荒れを気にする人は重曹を使うそうです。これに、ゴム手袋などをすれば、さらに安心ですね。

掃除のことを「あえて気にしない」という考え方も

すべて実践する必要はありせん。「掃除しなければならない」という意識は行動を制限します。「あえて気にしない」という考え方も「あり」です。これは、アトピー有症者でないと出てこない発想です。「掃除をきちんとしなさい」、「もっと清潔にしなさい」、「環境を整えなさい!」、アトピーの人はこんなことを周りから言い続けられてきました。それは、ダニ神話、ホコリ神話が作られてきた背景が影響しています。やり過ぎるとそれがストレスになり、アトピーを悪化させることになるということを心のどこかでわかっているのです。
そこで、「人を招待して喜んでもらう」ことを目的としてみてはいかがでしょうか。

家へ招待

「人を招待して喜んでもらう」(目的)

やじるし

「断捨離をする」(行動)

やじるし

「モノの場所を決める・ルンバブル」(習慣)

やじるし

「あとは力みすぎずキープ」(保存)

自分のモチベーションがあがりそうな目的を明確にすることです。ただ単にアトピーのために掃除するというのはなかなかモチベーションがあがりませんよね。そして、モチベーションが高いときにできるだけ行動し、あとはやり過ぎない。がんばりすぎない。サボるためにお掃除ロボたちがいるのです。そして、掃除をして清潔にしていればアトピーが良くなるのか?と聞かれれば、そうではないでしょう。それでも、掃除をした後というのは気分が晴れ晴れするものです。そして、気分が良く前向きに行動したということがアトピーを徐々に良くさせるのではないでしょうか。

アトピー性皮膚炎についてのコラムや書籍は数多くありますが、医師や専門家が書いているものが多く、私たちアトピー有症者のシェアはまた違う気づきやヒントがあると思っております。少しでもみなさまの参考となりますように。

横井謙太郎

NPO法人アトピーを良くしたい代表
生まれつきアトピー性皮膚炎があり、重度の症状に苦しんだ時期もあったが、現在は軽度まで改善。様々な治療を試し、今度は自分が支えになりたい「100人のアトピーの人がいたら、100通りの良くなり方がある」との想いからNPO法人を設立。アトピーサロンの定期的な開催、アトピーの人たちの夢を叶える「ドリームウィッシュプロジェクト」をはじめ、最近はメンタル面のサポートとしてカウンセリング事業にも注力。
NPO法人アトピーを良くしたい(http://atopyrecording.org/)

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