乳児湿疹とアトピー性皮膚炎~小児期の皮疹の変遷~

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年11月15日 [金]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

子供さんが1歳未満のいわゆる乳児期に乳児湿疹という診断を受けた方がおられると思います。しかし医学的には「乳児湿疹」という正式な病名はありません。
では何故このような病名が存在するのでしょうか。

それは、乳児期、特に生後半年未満の子供の湿疹はアトピー性皮膚炎なのか例えば脂漏性皮膚炎などの他の湿疹なのか皮疹だけからは判断できません。

診察時点で判断できないときにとりあえず乳児の湿疹ということで「乳児湿疹」という仮の病名をつけて経過を診てゆき、正しい診断にたどりつくためです。
そして慢性経過と定型的な症状が出て初めてアトピー性皮膚炎と診断します。

私はアトピーと診断がついたからといって、特殊に扱う必要はないと考えますが、アトピーは時間経過が長いためいかにゆっくり構えられるかが鍵だと思います。
乳児期のアトピーは顔面の他には胸・おなか・背中などの躯体部に湿疹が存在することが多く、この時点ではあまりドライスキンは目立ちません。
2歳までには特に何かをしなくても顔面、躯体の皮疹は消腿する傾向があり、2歳以降は四肢特に間接屈曲面に皮疹が存在し、全体にドライスキンが目立ってきます。
すべてのケースがそのようになるとは限りませんがひとつの目安と考えられます。
小学校時代までには本来治ってしまうはずの病気ですがこの皮疹の変化・変遷を知っていることは長期戦を戦うのに役に立ちます。

例えば1歳で顔に皮疹があってもあわてる必要はない訳ですし、3歳で皮疹が四肢に限局していればいい経過ということになります。
4歳でもし四肢と顔に皮疹が出てれば先に顔が良くなるためにどうするかを考えれば良い訳です。
とりあえず本来治るはずの病気を不要な不安で邪魔しないためにも、年齢による症状の変遷をある程度理解していただいていることが重要と考えます。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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