紫外線とアトピー性皮膚炎

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年11月13日 [水]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

皮膚科には「光線過敏症」という疾患があり、症状としては、顔面、手背やV字部(首から胸にかけてのシャツで遮蔽されない部分)などの、日光が当たる部位(日光裸露部)全てに症状が生じます。
さらに皮膚面より出っ張っている鼻や耳に反応が強く出るという特徴的な症状の分布を確認した場合、光線過敏症を疑い、光線テストという検査で確定診断します。

日常の診療では『日光がアトピーを悪くする』と感じている方に多く出会いますが、実は光線過敏症のように直接日光が湿疹を引き起こすのではなく、アトピーでは日光による刺激から掻破行動を介して湿疹を増悪させているケースが多いと考えられます。
したがって、こういった場合は殆ど視診だけで光線過敏症を否定できます。

今まで『海水浴療法が有効』と言われたり、現在保険診療の治療法として紫外線療法そのものが承認されているにもかかわらず、『日焼けはアトピーに悪い』と感じている人の方が圧倒的に多いと思われるのは、このような経緯があるからではないでしょうか。

あくまで仮説ですが、このギャップを考察してみたいと思います。
ひとつは、太陽光に含まれる赤外線・可視光線などの熱作用のせいでかゆみが生じ(温まったときにかゆみが生じるように)掻いてしまうあるいは擦ってしまい、増悪したという筋書きが考えられます。それから、急激に日焼けすると、日焼けで起こった皮膚炎がアトピーの皮膚炎に重なり、もとの病変を掻くことで悪くするとも考えられます。

また紫外線が持つ皮膚の老化促進作用、発がん性などにより、すごくイメージの悪いものとして社会的に浸透してきたことが背景になり、たまたま増悪した時に日焼けが重なると、意識しやすい『日光』をつい犯人扱いしてしまうということもあるかもしれません。

いずれにしても日光が悪いなどと認識してしまうと、つい外出が億劫になったり、スポーツを回避したりなど、活動性が低下する要因になり、生活の質(QOL)の低下につながりますので注意が必要と考えます。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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