阪神大震災とアトピー性皮膚炎 1

[清水良輔先生の診察日記] 清水良輔先生

2013年12月04日 [水]

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皮ふ科しみずクリニック院長、清水良輔です。

1995年1月17日早朝、当時の勤務先である神戸労災病院に車で向かっていました。自宅から病院へはその時間帯はスムーズに移動でき、その道中の状況は倒壊したビルなどもなく被害の甚大さが計れないまま病院に到着しました。すでに救急の患者さんが運びこまれており外科や血管外科の先生たちが手術場で奮闘していました。皮膚科の患者さんは全く来院されず、私たち皮膚科医は外来で処置できる外傷の処置に専念することになりました。

病院の近所は幸い被害の少ない地域で上からものが落ちてきて、頭皮に外傷をおった方々が次々と来院されました。処置をしている内に患者さんの情報やメディアの情報で被害の大きさが伝わってきました。

母親と連絡がとれていなかったので一段落した合間に車で15分の実家まで様子を見に行きました。病院から約500メートル南下すると全く違う光景でした。ビルが今にも倒れそうに斜めになり、信号機は電柱ごとねじまげられ、その電線が車の高さまで垂れ下がって進行を妨げていました。実家の近所までくると昔から慣れ親しんだ薬剤師会館が根こそぎ倒壊しており、この時は母もだめかと思いました。
実家は後の判定で半壊でしたが、倒れた家具と割れた食器などで足の踏み場もない状況の中、母親の無事だけ確認しすぐに病院に引き返しました。

その後午前中は救急車で搬送される方、徒歩でたどり着き外来で処置を受ける患者さんたちでごったがえしましたが、午後になってからは、大渋滞の影響により救急車での搬送は激減しました。本来15分で到着できる距離を2時間半もかかって到着するケースまでありました。

それからの一週間は入院患者さんへの対応と救急業務で病院に缶詰状態となりました。アトピーの患者さんはというと、他の皮膚科の患者さんと同様ほとんど来院されなくなりました。一体アトピーの患者さんたちはどうしているのだろうと思いをめぐらしている最中、アトピーの支援団体の方々や他地域の皮膚科医会の先生方から支援の申し出がありました。

その申し出は大変有難かったのですが、どういう訳か患者さんがいないのです!

その後、大震災を通して貴重なアトピー診療の経験をすることになったのです。

清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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