Q&A集 後編

[アトピーQ&A] 清水良輔先生

2013年12月13日 [金]

おすすめアトピー記事

仕事中にかゆくなったら

仕事中にかゆくなったときは、どうすればいいのでしょうか?

私の経験から申し上げると、パターン化している掻破場面と言うのは一日に何ヵ所かあると思います。
仕事ではこういう場面、帰ってきたらこういう場面、お風呂の前後や寝る前など、いくつか場面があると思うのですが、一般的な傾向としては仕事中に掻く方が掻く程度が軽い傾向があります。
アトピーレコーディングで自分の掻破場面を観察して対処法を実施する場合、どこから始めるかと言うと、全ての場面で対処するのは難しいですから、掻く時間が一番長い所から始めます。
先ほど仕事中は掻く程度が軽い傾向があると言いましたが、そういう意味では「仕事中は掻いてもいいや」くらいの気持ちで取り組んでみた方が良いかもしれません。
それでも仕事場で掻くシーンが何ヵ所かある場合は、やはり掻く時間が長い場面から、対処法を実施してみると良いと思います。

不定期に起こるかゆみへの対処

不定期に起こるかゆみにも、セルフモニタリング(観察)することは有効なのでしょうか?

パターン化していないかゆみについては、私は無視しましょう。と患者さんに言っています。
と言うのも、掻くことがいきなりゼロになることはありませんし、偶発的にポリポリ掻くことは予想しにくいので、それよりも腰を据えて長時間掻いてしまう場面に対して対処法を取り組んでいった方が改善の効果が高いと思います。
多少掻いてもそんなに悪くなりませんが、長時間掻いたりすると一日で肌の状態がすごく悪くなったりしてしまうので、ついついポリポリ掻いてしまうくらいはむしろいいのでは?と言うくらいの気持ちで私は考えています。

子どもが学校でたくさん掻いている

子どもが学校でたくさん掻いている気がします。
どう防いであげればよいのでしょうか?

学校や保育園なので先生が家族と一緒になって協力してくれる場合は別ですが、そうでない場合、お子さんが楽しく遊んだり勉強しているようならそこは無視して、帰ってきてからの部分だけアトピーレコーディングに取り組んでもらえれば良いと思います。
学校でも掻いちゃダメとお子さんに言うのではなく、「かゆかったら掻いてもいいよ。」くらいの気持ちで良いのではないでしょうか。
家に帰ってからの掻破行動が改善されれば少なくとも以前より良い状態になると思いますので、そのくらいの気持ちで付き合ってあげてみてください。

アトピーの子どもを持つ母親へのアドバイス

アトピーの子どもを持つ母親は神経質に悩む人が多いと思います。何かアドバイスをいただけますか?

小児のアトピーは、治ることを邪魔しなければ、本来は小学校時代に治ってしまうものです。
この「邪魔をしない」と言う部分で一番大切なのが、お母さん自身が元気であること。また、お子さんを中心とした家族のケアシステム作りです。
お母さん自身が調子を崩したり病気になってしまうと、お子さんのアトピーも悪化すると言う経験を私はたくさんしています。
従って、家族のシステムとは、お母さんを中心にお父さんや家族が同じ考えでお母さんをどれだけ支えられるかと言うことになります。
お母さんとお父さんとで考え方や治療の方針が違う場合、お子さんのアトピーは良くなりませんが、病院にお母さんとお父さんが一緒に来られるお子さんのアトピーはだいたいキレイになっています。
子どものアトピーは大人と違って、良くなる要素をたくさん持っています。
何度も言いますが、とにかく一番重要なのは、お子さんを中心とした家族システムです。
アトピーだからこれをしたらダメ、掻いちゃダメなど、そういうマイナスの要因を持った環境にお子さんを置かないように気を付けてくださいね。

アトピーレコーディングの書き方を知りたい

アトピーレコーディング(アトピー日記)を書くとなると、悪い原因のことばかり考える人も少なくないと思うが、どう書いたらいいのか?

おすすめなのが、良いことばかりが書いてある「良いこと日記」を書いて欲しいです。とても辛い一日だっだけど、そんな中でもこんな良いことがあった。などを書き綴って欲しいです。
レコーディングをすると、悪い方悪い方に考えてしまうかもしれないのですが、何とかそれを良い方に考えて日記を続けてもらえると良いですね。
また、それと一緒に「掻破日記」もつけてほしいです。 掻破日記については、良いこと日記とは違ってセルフモニタリングのような内容をドライに客観的に書いてください。
いつどこで何分くらい掻いたのか。また、できればどんなきっかけで掻き終わったか?と言う掻き終わりの部分まで書いてもらえると、さらに良いと思います。

アトピーレコーディングがストレスになる?

アトピーレコーディングをすることがストレスになったりしませんか?

人によってはアトピーレコーディングを続けることがストレスになる人もいるかと思います。
良いことが書かれた「良いこと日記」ではなく、悪いことばかりを書きつづっているとあまり良い結果が生まれない事が多いと思いますので、ぜひこんな良いことがあったという良いこと日記を書いてみてください。

アトピーレコーディングは誰が書く?

アトピーレコーディングは本人がつけたほうがいいのでしょうか?

ご本人が家族のサポートを受け入れるのであれば、ご家族やパートナーの方がアトピーレコーディングのアシストをされるのは全然構いません。
ただし、「こういう場面で掻いてた」などを家族の方が書き連ねると、マイナスの「悪いこと日記」になる可能性もありますので、その辺をよく話し合いながら「良いこと日記」になるようにアシストしてあげてください。
また、お子さんが小さい場合は親御さんがお子さんの様子を観察して書いてみてくださいね。

ステロイドについての情報が多すぎる

ステロイドについて、あまりに多くの情報がありすぎて、何が正しいのかわかりません。

少し長くなりますが、ステロイドの歴史からお話ししますと、私が医者になった昭和53年はステロイドは塗り薬なので何の心配もないと言う時代でした。
しかし、60年代の半ばくらいから、長くステロイドを使っている人が止めた時にすごく酷くなるという体験をされた方が相次いで出て来ました。
その時、患者さんのそういう言葉に耳を傾ける先生方もおられて一緒にステロイドを止めようと言う流れができて、脱ステロイドの報告が学会にたくさん発表されました。
しかし、ステロイドを使わないと行けないと言う真逆の意見も出てきて、一時学会は大揺れになりました。
私は当時、自分に近い先生が脱ステロイド療法という名前を付けられたこともあり、ステロイドを止めた患者さん達とかなりお付き合いをしていましたが、「ステロイドを止めることが治療である」と誤解を与えたこともあったのではと考えています。
ステロイドは短期使用に対してエビデンス(医学的根拠)はありますが、2ヶ月以上塗り続けた時に良くなっていると言う証拠がありません。
また、私自身はステロイドを使い、症状を抑えることで何が良いのか、自分の良くなるストーリーが見えてこないという事がステロイドの最大の欠点だとは思います。
ただ、ステロイドを使って良くなった経験をした方もたくさんいますし、つらい経験をした方もたくさんいます。
それらを一括りにして、一つの対処療法でしかないステロイドを止める止めないという話になるのは違うのではと考えています。
ステロイドは薬としてすごく役に立つこともありますし、ステロイドが不安だと、使ってもうまくいきません。
僕の病院に来ていただいている患者さんには、そのあたりの意見をよく聞かせていただいて、ご本人が一番納得できる方針で治療をしています。
相談にのってくれる医療機関と一緒に、納得しながら治療することが大切だと思います。

皮膚疾患以外の病気は併発する?

アトピーを長く患っていると他の余病を併発するのではと近頃思うのですが、アトピーの人がなり易い(アトピーの延長である皮膚の感染症以外で)疾患はありますか?

アトピー性皮膚炎の方は、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、白内障、網膜はく離などの疾患を合併しやすいですが、全身疾患としてはとくにかかりやすい病気はありません。
むしろ内臓的にはお元気な方が多いようです。

ステロイド軟膏の重ね塗りと混ぜて塗る違い

生後6ヶ月の子どもの母です。
2ヶ月の頃から両頬に湿疹が出始め、プロペトで保護した後ステロイド軟膏を塗るように小児科から指示を頂きました。
プロペトとステロイド軟膏を重ねて塗布することと混合して塗布することに違いがあるのでしょうか ?

重ねて塗るのと混ぜて塗るのとは大きな違いがあります。
重ね塗りの場合は、下に塗った薬の上に薬を塗ると下の薬が良くききます。
具体的に申しますと、下にステロイド軟膏を塗って上にプロぺトを塗るとステロイド軟膏単独で塗るよりも効果も副作用も出やすくなります。
逆に下にプロぺトを塗って上にステロイド軟膏を塗ると、ステロイド軟膏の効き目はおちます。
それからステロイドをプロぺトに混ぜるお話ですが、ステロイドはもともと吸収が悪い薬なので2~3倍に希釈しても一定量は吸収されるため効果は落ちませんし副作用が減ることもありません。
もともと混ぜずに使うべきものと考えます。

紫外線療法

紫外線療法のことでおうかがいします。
始めたときはとても効果があり、調子もよくすごくうれしかったのですが、回数を重ねる毎にだんだん強くしていったところ、ピリピリ感があります。
このまま続けたほうが良いのでしょうか…。
ネットなどで調べてみても、その辺のことはあまり書いてませんでした。

症状の程度やどういう紫外線療法かがわからないのでお答えしにくい部分があるのですが、少しぴりぴり感があるのは比較的良くあることですので、まず主治医の先生に相談してみられることだと思います。
せっかく良く効いているのであれば本当に良くなられて湿疹の影響を受けていない生活が戻ってから中止の方向を模索されたほうが良いのではないでしょうか。

プロアクティブ療法について

プロアクティブ療法について。 湿疹がないときでも塗る予防療法というと、ピンときませんが、ぜんそく患者の場合に当てはめると、症状が治まっていても気道は常に炎症があるので、悪化・発作を起こさせないためにも、治ったと患者が感じていても、吸入ステロイドで予防(炎症を抑えておく)する。
アトピー性皮膚炎の、特に重症患者をこれに当てはめると、重症状態の患者の皮膚は炎症ゼロになりにくいので、炎症が長いことゼロになっていない患者に、プロアクティブは有効に作用する、という解釈でよろしいでしょうか?

喘息の例えのイメージと解釈でよろしいかと思います。
一旦ステロイドでアトピーの炎症が治まっていても火種がくすぶっているという状況に対して、「良くなっても副作用にならないように、日にちを開けた形で外用を続ける」ことで掻破習慣から解放され、くすぶっている炎症が取れてくるというイメージです。
血液検査の指標が日にちを開けていく有用な指標になりますので、是非皮膚科医とよく相談の上取り組んでいただきたいです。
そしてやがてはステロイドをゼロにするという目標を持ちたいものです。

掻くと擦るの違い

かゆみを感じた際に、掻く代わりに、患部を傷つけないように軽く擦るようにしているのですが、それだけでも患部の皮膚には悪影響があるのでしょうか。
また、リンパマッサージなどで軽く擦ったり指で押したりするのも控えたほうが良いのでしょうか。

爪の先端で掻くと傷になりますが、爪の表面で擦ると赤くなり、爪が光ります(真珠様爪といいます)。
指の腹で擦るのは爪の表面で擦るよりはマシですがやはり影響があると思います。押すのは影響が少ないと思います。
リンパマッサージは他者が行うのであれば自分で擦るのと違ってあまり影響はないと思います。
いずれにしても病変の程度と擦る強さ、時間によって変わってきます。
爪を立てる方がマシではないかと個人的には思っています。

アトピーと入浴

毎日お風呂は入った方がいいのでしょうか。
入浴後は保湿が大変ですし乾燥しやすいような気がします。
あまり汗をかかなかった日は、控えた方が良くなっているような気もします。

アトピー性皮膚炎の方の入浴が良いか悪いかに関しては、白黒はっきりさせるような回答は存在しないと思います。
入浴のメリットは体を温めること、疲れがとれて眠りが深くなること、気持ちが切り換えれることなどアトピー性皮膚炎にとって基本的には非常に有用だと考えます。
しかし、状況が悪い時の入浴は温まることで掻くことが増えたり、タオルで無意識に擦りすぎてしまったりなど入浴が悪循環を作ることもあります。
したがって、調子の良いときや調子が悪くても薬をきちっと使えて調子が上がっているときには、どんどん積極的に入浴された方が良いと思います。
逆に、調子の悪いときにはカラスの行水にしたり、入浴後の乾燥に備えて浴室から出る前の体が濡れているうちに、乳液タイプの保湿剤を塗るとか、濡れたままバスローブ(安物でいいです)を着てしまってバスタオルで擦るのを防ぐなどの工夫を試していただいています。
現在の状況に応じての工夫が必要になるということになりますが、入浴が気にならず出来るということはアトピー性皮膚炎のゴールの一つと考えています。

受験勉強に集中するには

アトピーの影響で受験勉強に集中ができません…どうしたらいいですか?

アトピーの湿疹はいろいろな影響を及ぼしますね。
ご本人の価値観や性格、ご家族の考え方や価値観もわからないので的確なアドバイスは難しいと思いますが、ステロイドをきちっと使って志望上位高をめざすこともできますし、志望下位の高校を目指してもアトピーのせいということで周囲の人々も納得してくれると思うし、もっと気分を楽にして成り行きにまかせるという選択肢もあると思います。

浸出液の処置について

掻きすぎて浸出液が出ます。それを拭き取ると傷を治すのが遅くなりますか?拭かないと流れ落ちてくるのも拭く理由の一つです。

浸出液をふき取っても問題ありませんが、ふき取るつもりが擦ってしまうとさらに悪くなってしまいますので、適切な軟膏処置を受けられることが必要と考えます。

体の中の痒み

体の中から変に痒みが応じます。
自分でもなんでこんな痒みがくるのか分かりません。
そして、最近では、その影響で息が少ししずらいです。 これは、アトピー性皮膚炎に関係するんですか?また、どうしてこんなことになるんですか。 治す方法は、どのような方法がありますか?

アトピー性皮膚炎は一見なにもない皮膚にかゆみがあるのが特徴です。調子が悪い時には深いところが痒く感じられて掻いても届かないような感覚に襲われたりします。
息が少ししづらいのは、症状が辛いため過呼吸になっていることが考えられます。おそらく内臓が悪いというようなことはないと思います。
基本的にはアトピーが良くなることが重要ですが、医療機関に相談されて過呼吸の時の対策や薬を考えてもらうことが必要と思います。

農業に転職!

思い立って農業に仕事を転職しました。毎日 日差しが強く、沢山の汗をかきます。皮膚も乾燥気味です。何か気をつける点ありましたら教えてください。

汗をかけることも紫外線を浴びることも基本的にはアトピーのよくなる方向のことと考えています。
紫外線療法はアトピーの治療として有効であるという医学的証拠があるといわれています。発汗に関しては汗をかけなかった患者さんが何かのきっかけで汗をかけるようになって良くなった、あるいは良くなったら汗をかけるようになっていたという方を多く経験します。
一方で汗をかくと悪くなる、日光にあたると悪くなるというイメージをもって、できるだけ汗をかかないで日光を避ける生活を工夫している方を多く見かけます。 この現象は汗をかいた時に掻いてしまうことで増悪したことを、「汗が悪い」と認識してしまったり、日焼けした時に太陽光の赤外線による熱作用で暑くなって、あるいは発汗と関連して掻いてしまい、増悪したことをもともとの紫外線が悪いというイメージと相まって「日光が悪い」と認識してしまうということが考えられます。
そして、こういったアトピーにまつわる不安がさらにアトピーを悪くするという悪循環を呈するというのが私の持論です。
以上参考になるかどうかわかりませんが、これからの新しいお仕事は発汗や日光とうまく付き合わないといけないお仕事と思います。
体験を通してアトピーが良くなることをお祈りいたしております。

掻いた部分の変色について

掻いた部分が黒もしくは灰色に変色します。ステロイドの後遺症という先生もいますが、その部位にステロイドは塗っていません。痣のようになっています。原因と解決方法を教えて下さい。

診せていただけないので確定的ではないのですが、おそらく痒疹といって掻くことでしこってしまった湿疹だと思います。
黒もしくは灰色の変色は慢性に続いてしまった湿疹の影響で「炎症後色素沈着」と呼ばれています。
ステロイドを永年にわたり使いすぎてしまってひどくなってしまった場合、あたかもステロイドが原因のように勘違いしてしまいますが、ステロイドで色素沈着が起こるのではなくあくまで炎症がひどくなったせいだと思います。
治療はステロイドを使う使わないにかかわらず掻くことが減らないとよくなりません。 本サイトのコラムなどご参照ください。


清水良輔先生

皮ふ科しみずクリニック院長(皮膚科専門医) 1953年、神戸市生まれ。
白衣を着ない出で立ちと、髭・長髪がトレードマーク。
兵庫県神戸市にて、皮膚アレルギー疾患を専門とし長年診療を続け、これまで診てきたアトピー性皮膚炎の患者数は3万人以上。
約15年、国内の皮膚科としては唯一、心身医学的な観点からアトピー性皮膚炎を診療し、数多くの患者さんを精力的に治療している。
趣味:料理、旅行、スキー、サッカー観戦、競馬、南の島で心理本を読むこと
好きなこと:食べること
座右の銘:次善の策

略歴

1978年帝京大学医学部卒業
1983年神戸大学医学部皮膚科 助手・医局長
1994年神戸労災病院皮膚科 部長
2001年神戸大学医学部臨床助教授兼任
2002年神戸市灘にて開業(皮ふ科しみずクリニック) 現在に至る

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