アレルゲンの除去や民間療法はほどほどにしましょう 1

[再発予防と生活するうえで気をつけたいこと] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年3月17日 [木]

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アレルゲンの除去は、ほどほどに

厚生労働科学研究班がまとめたガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の治療の柱の一つとして「原因・悪化因子の除去」をあげています。これを「アレルゲンの除去」だと思ってがんばってしまう人が多いのですが、それは誤解です。

たしかに、ヒョウヒダニ(ダニの一種)、動物の毛、フケなどはアトピー性皮膚炎を悪化させる物質(アレルゲン)とわかっていますが、これらをすべて完璧(かんぺき)に除去することは、不可能といってもいいでしょう。なにより家から一歩外に出れば、大気中にはダニやホコリがたくさん浮遊しています。アレルゲンの除去どころではありません。アレルゲンの除去は、ほどほどにしておいても、アトピー性皮膚炎は、スキンケアと薬物療法をしっかり行えば、かなりの人は皮膚の状態がよくなります。室内は、一般の掃除機で少しこまめに掃除をする程度で問題ありません。寝具も素材に注意して清潔に使用すれば、高価なものをそろえなくても十分にまかなえます。

食事についても同様です。やみくもにアレルゲンと思われる食べ物を避けることは問題です。成長期にある子どもの場合、栄養不足に陥りかねません。アレルゲンとなっている食べ物の除去は、アトピー性皮膚炎に食物アレルギーを合併していて、どの食べ物がアレルゲンかがはっきりしているときだけに行います。

つまり、ガイドラインのいう「原因・悪化因子の除去」とは、徹底した「アレルゲンの除去」というより、むしろ、ストレスをためない、汗をこまめにふく、刺激をさけるといった、自分で実行できる日常生活上の注意点を指しているのです。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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