病気のしくみを正しく理解しておきましょう 6

[病気に対する正しい知識] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年7月07日 [木]

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皮膚でおこるアレルギー反応のメカニズム

皮膚で生じる特殊な免疫のシステム、アレルギー反応とは、具体的にどのようにしておこるのでしょうか。アレルギー反応にかかわっているのは、IgE(免疫グロブリンE)という抗体です。

なんらかの理由で体のなかにアレルゲン(抗原)が入ってくると、免疫細胞の一つであるB細胞が、免疫の司令塔ともいえるT細胞の号令のもとに、IgEをつくり出します。このIgEがかなりのくせ者です。皮膚や気道の粘膜、腸管の粘膜に存在している肥満細胞にくっついて、その細胞内に蓄えられているヒスタミンなどのかゆみ物質を放出させます。そして、これらが表皮の角層に延びているかゆみの神経細胞の受容体と結合して、かゆみをもたらすのです。

このようなアレルギー反応のメカニズムをもとに考え出されたのが、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などの薬や、紫外線療法です。ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、紫外線療法は、司令塔であるT細胞の働きを抑えます。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は、ヒスタミンがかゆみの神経細胞にくっつくのを阻止することで症状を改善させます。

かゆくなるしくみ

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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