病気のしくみを正しく理解しておきましょう 5

[病気に対する正しい知識] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2016年6月16日 [木]

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「アトピー素因」は、アレルギー体質の一つです

「アトピー素因」について説明しましょう。アトピー素因とは、アレルギー体質の一つです。アトピー性皮膚炎の患者さんの約8割にアトピー素因がみられます。残りの約2割の人は、アトピー素因をもっていないにもかかわらず、アトピー性皮膚炎を発症しています。つまり、アトピー素因はアトピー性皮膚炎になる可能性を高める要因ではありますが、アトピー性皮膚炎を決定づける条件ではないのです。

私たちの体には、細菌や化学物質など外部から体内に侵入した異物や有害物を排除して、体を守る免疫というシステムが備わっています。ところが、アレルギー体質の人には、生まれつき特別な免疫のシステムが備わっていて、多くの人にとって無害なものも、有害(抗原)ととらえやすくなっています。そして、これらを過剰に排除しようと働くため、アレルギー反応がおこってしまいます。

しかも、アトピー性皮膚炎の患者さんは、もともと皮膚のバリア機能が低いという体質も併せもっています。そのため、ほんのささいな異物も刺激物とみなされてアレルギー反応がおこってしまうのです。

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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