重症度の変化に注意し、治療を進めます 2

[診断はこのように行われます] 古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

2014年7月30日 [水]

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重症度の分類のしかた

重症度は、「皮疹の状態」「炎症の程度」「患部の広さ」によって決まります。分類は、もっとも重症の状態が最重症で、重症、中等症、軽症の順に軽くなっていきます。アトピー性皮膚炎は、体全体に症状が現れることが少なくありません。そのため、体にできた皮疹を見て、「重症かもしれない」と不安に思ってしまう人もいるかもしれません。しかし実際のところは、「強い炎症がおこっている部分が、体のどれくらいの範囲に広がっているか」という程度と広さのバランスが大事なポイントです。

全身に皮疹が出ていても、かゆみが強い範囲があまり広くなければ軽症です。また、体の一部分だけでも、そのすべてにひどいかゆみが出ているようであれば、中等症や重症になる可能性もあります。「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」では、最重症、重症、中等症、軽症の判定は、次のように定めています。

  • 最重症
    強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上
  • 重症
    強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10~30%未満
  • 中等症
    強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満
  • 軽症
    面積にかかわらず、軽度の皮疹のみがみられる

重症度にある「強い炎症を伴う皮疹」とは、皮膚が赤く盛り上がる(紅斑、丘疹(きゅうしん))、ジクジクした湿疹(浸潤)、象の皮膚のように厚く、硬くなった状態(苔癬化)を指します。ちなみにこれらの皮疹では、かゆみが強いため、勉強や仕事が手につかない、眠れないといった状態になり、生活の質が下がってしまいます。

また、皮膚科では、日本皮膚科学会がまとめた「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」のなかにあるアトピー性皮膚炎重症度分類に沿って、もう少し専門的に重症度を判定します。実際には、最重症や重症と診断されるのは全体の5%以下で、残りの95%以上は中等症、軽症のなかにふくまれます。

診断から治療までの過程

(正しい治療がわかる本 アトピー性皮膚炎 平成20年10月30日初版発行)

古江増隆 九州大学大学院皮膚科学教授

1980年東京大学医学部卒業、同年東京大学医学部附属病院皮膚科学教室入局。
85年同病院皮膚科医局長。
86年、アメリカのNational Institutes of Healthの皮膚科部門に留学、88年東京大学医学部附属病院皮膚科復職。
同年東京大学皮膚科学教室講師、病棟医長。
92年山梨医科大学皮膚科学教室助教授、95年東京大学医学部皮膚科助教授。
97年九州大学医学部皮膚科教授、2002~04年九州大学医学部附属病院副院長兼任。
08年より九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センターセンター長兼任。
02~04年厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」主任研究者、05~08年同「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」主任研究者。

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